INTERVIEW

ニコンFシリーズとF1トップ・フォトグラファーの対話 #07

デジタルでもアナログでも写真は写真

PF編集部 2022.11.30

D5以降はもう完璧、ミラーレスに悩み中

フィルムカメラでF1フォトグラファーとして全盛期を経験した金子さん。デジタルカメラの時代に感じたこと、そしてミラーレス時代への思いとは。

PF:デジタルカメラになった後、カメラとの対話に違いはあったのでしょうか。

金子:僕はあまり感じない。ただ作業の順番が変わりました。フィルムの時は1レース終わってから現像する。その現像の仕上がりを見て、次の時に修正しているわけ。デジタルはすぐ見えるから修正が早くなりました。

あと、その日のうちに作業をしてその日のうちに写真を送るから家に帰ってきてからが楽になりました。今はレースの金土日の作業はすごくきつくなったけれど、月火水は休めます。

photo: Hiroshi Kaneko 金子 博 2015年モナコGP、ルイス・ハミルトンとメルセデスAMGペトロナスW06。

金子:基本的にデジタルでもフィルムでも、写真そのものにはまったく関係がないです。何か夢がないけど、「デジタルはさ」とかうんちく垂れたい気もするけど、違いは無いよ。写真撮ることに関しては一緒です。

最近のカメラは「もうよろしくお願いします、僕何も文句はありませんから、本当に普通にしててください。よろしくお願いします」ってそんな感じ。それくらい高度化して素晴らしいと思います。化け物です。

フィルムカメラは、レンズから入ってくる光が当たって撮像される、という意味ではどれも一緒なわけですよね。それでもやはりボディが違う対話感をもたらすというのが面白いですね。

photo: Hiroshi Kaneko 金子 博 デジタル時代になった一眼レフたち。D1とD4s。

PF:現在、使われているニコンD6まで段階を追って大きく進化していると思いますが、その中で特に印象に残っているモデルはありますか。

金子:最初のD1から使ってみたけれど、確か実戦投入はしなかったです。D2から実戦投入しだして。D2は画質がすごく悪かった。大きいカレンダーを作ると「これ、デジタルだな」とすぐバレちゃうんです。D3まではもう全く、プロとしては使えないカメラでした。シャッターを切ってから画像の読み込みに時間が掛かり過ぎるなど、機能的な問題がありました。少しでも画面の中に太陽が入るとびーっと線が入ってしまうし、細い線の表現ができない。赤い細い線を拡大するとギザギザになってる。ジャギーが出るんです。

D5から僕は問題を感じなくなりました。D5で一応完璧だと思います。D6はそれよりもっと進化した。だから今フィルムで取るメリットはないと僕は思います。だけど写真好きの人とかは「いやフィルムがね」とか言い出す。僕は全然それはないです。全くもう安心しきって使える。今のD4、D5、D6ぐらいはOKだと思いますね。

photo: Hiroshi Kaneko 金子 博 2002年オーストラリアGP、表彰台でシャンパンを浴びるルーベンス・バリチェロ。下:2009年オーストラリアGP、フェラーリF60とフェリペ・マッサ。

PF:今後はミラーレス一眼の時代に突入ですね。

金子:僕はまだ本格的に使ってないけど、D6とミラーレスのZ9、どっちがいいかというと、はっきり試していないからわかりませんが、ミラーレスのほうがカメラとして機能的にも性能的にも画質的にも絶対いいでしょう、きっと。

軽くて、画質がきれいでフォーカシングもすごいらしいです。僕もカメラマンとしてちょっと使ってみたいんだけど、レンズまで換えたら数百万かかるし、どうしようかな、そいつらと付き合わないうちにカメラマン辞めていこうか、少しかじっていこうかと今、悩み中です。
<連載完>

photo: Hiroshi Kaneko 金子 博 2009年ブラジルGP、フェリペ・マッサとフェラーリF60。シューマッハが去ったあと、優勝1回と苦戦した。

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