PF編集長の物欲放浪記 #001:mont-bell プラズマ1000 ダウンジャケット
田中誠司 2026.01.23何かの目的を達成するために生まれたモノの性質・デザイン・コンセプトにいちいち興味を示し、その使い心地や耐久性を自ら試して、時には成功し、時には失敗しつつ、その特質がなぜそうなっているのかを解き明かしたくなる。さらには良いモノがあれば人に薦めたくもなる。基本的に「モノ」への執着がきわめて強いPFエディターが、恥じらいと後悔を傍らに自らの物欲体験を綴っていく。
究極の“携行防寒”──プラズマ1000の正体
ダウンジャケットならすでにいくつも持っているのだが、多くの製品は嵩張るし、重い。ぼくが軽いダウンの重宝さに気づいたのは、同じモンベルの「EXライトダウンベスト」をかれこれ10年近く前に入手したからだ。ホットドッグがちょっと太ったくらいのサイズで、折りたたんで袋に詰めればどこへでも持っていける。この手軽さを袖付きでも味わうために、軽さと薄さに特化したダウンジャケットをいろいろ探した結果、同じモンベルに落ち着いた。
この「プラズマ1000ダウンジャケット」はモンベルの看板商品らしく、色によっては延々と欠品が続いているし、メルカリなどでは定価を超えるプレミア価格で出品されているものもある。2026年1月現在、モンベルECサイトでの在庫はSサイズの一部のカラーに限られる。2年越しでセールを待ってみたものの結局ディスカウントにはならず、定価で購入した。
メーカーの公式年表では、世界最高品質とする1000フィルパワー・EXダウンを封入し、表地には7デニール・バリスティック エアライト®ナイロン(はっ水加工)を採用した“世界最軽量”のダウンジャケットとして2013年に登場し、国際見本市「OutDoor 2013」でアワードを受賞したことが記されている。
現行品(品番#1101493)の平均重量は130g、収納サイズはΦ10×14cm(1.1L)と、行動中の“お守り”のように持ち歩ける携行性が最大の武器だ。
1000フィルパワー(FP)、ダウン90%・フェザー10%の中綿は少ない量でも大きく膨らみ、デッドエアを多く抱え込むことで保温力を稼ぐ。公式説明では一般的な550FPと比べて綿量を約45%軽量化できるとしており、軽さと暖かさの両立を裏付ける。
さらに、縫い目を減らして中綿の片寄りと熱放出を抑える独自キルティングパターンを採用。仕様面では、ダウンプルーフ加工、あごに当たりにくいジッパー、腰ポケット2個、スタッフバッグ付属と、必要十分な実用装備も備える。程よいフィット感でミドルレイヤーにもアウターにも使えるという位置付けで、Light&Fast®の思想をストレートに体現した1着だ。
一方で、極薄生地ゆえに羽毛抜けや片寄りが起こり得る点は注意事項として明記されており、取り扱いは丁寧さが前提になる。価格は公式オンラインストアで¥27,940(税込)である。
軽さは賞賛、繊細さは覚悟
ネット上のレビューで最も多い賛辞は「とにかく軽い」「驚くほど小さくなる」という一点突破の携行性だ。130g級の軽さと1000FPの暖かさで、行動中の休憩や山小屋・テント場での防寒、旅先の温度調整まで守備範囲が広いという声が目立つ。海外レビューでも“ニッチだが唯一無二の軽さ”として評価され、肩口やザックの隙間に入れても存在を忘れる、と表現される。
反面、7デニールの極薄シェルは引っ掛けや火の粉に弱く、羽毛抜けなど扱いの繊細さはデメリットとして繰り返し挙げられる。加えてフードなしのジャケット形状ゆえの防寒限界や、超高フィルパワー素材の耐久性・湿気環境での不安を指摘する声もある。絶対的なダウン量は多くないため、厳冬期に単体で頼るより「ミドルレイヤー向き」と捉える評価が主流。価格は高めだが、軽さに価値を置く人には納得感がある、という結論に落ち着きやすい。
袖付きの軽さを探す、小さな旅
続いてぼく自身の評価を述べよう。ダウンジャケットとして世界最軽量を謳うとおり、持ってみても着てみても、まるで何も存在しないかのように軽い。携帯性と軽さは期待通りだ。前述のダウンベストと異なり、サイドにはポケットが備わるが、ファスナーもボタンも装着されない。物入れというより手が寒いときに突っ込むポケットの役割がメインだろう。そうまでして軽量化にこだわっているのだ。
さらに生地を透かしてみると、その徹底ぶりが理解できる。デザイン性への配慮もあるのだろうが(それがこの製品の魅力にもなっている)、完全に碁盤の目のように上下左右にステッチが入っているのではなく、羽毛の通り道がS字状に配置され、結果ステッチの長さと重さを低減している。
暖かさは、正直言って想像したほどのレベルではなかった。ダウンの量が絶対的に少ないことは自明だが、風が吹くとなんとなくステッチの隙間から冷気が侵入しているような気もする。こういうことはお店で試着しただけではわからない。
ぼくはそもそもこのダウンを、半ばインナージャケットとして、寒い時期には上からハードシェルを着用する前提で買ったから構わないのだが、これ一枚で軽くてどんな寒さも凌げる、と期待するのは間違いだろう。
とはいうものの、普段遣いもスポーツ・シーンでも、「軽さが絶対」なことは結構頻繁にある。だからついつい手にとってしまうのだ。週に何回かは袖を通している気がするし、いまや手許にないと不安ですらある。
目立つロゴにマジックインキの“焦げ茶”
買ってから気づいたことがもうひとつ。ブラウンの生地に薄いグレーで刺繍されたmont-bellの文字が、思ったよりずっと目立つのだ。
実は黒いダウンベストにも白いロゴ刺繍があって同じ事をしたのだが、ぼくはマジックインキの「焦げ茶」を買ってきて、ロゴ部分にチョンチョンとインクを刺して目立たないようにしてしまった。
自分は仕事で時に会社や製品のロゴデザインをプロデュースすることもあるので、こうした行為は「大変申し訳ない」と思うのだけれども、別にロゴが欲しくて買ったわけではないし、誰かの商標を宣伝する看板代わりになりたいわけでもないので、こうしたロゴ消しは頻繁にやってしまっている。
文:田中誠司