STORY

ジェフ・クーンズのBMWはすごい塗りモノだった

世界限定99台、スペシャルペイント車が日本上陸

PF編集部 BMW M850i xDrive グラン クーペ 2022.05.28

いまどきだからラッピングかとおもいきや

六本木ヒルズの麓、カフェ・アンド・スペースに、現代アートの巨匠であるジェフ・クーンズによりデザインされた世界限定99台生産の「THE 8 X JEFF KOONS」が、5月28日(土)まで展示されている。

BMWは1970年代から、アンディ・ウォーホルやフランク・ステラ、アレクサンダー・カルダーといったトップクラスの現代芸術家に一台の車両を託し、車体をキャンバスとした「アート・カー」として発表してきた。

ねじった風船に見えて実は金属製の彫刻である「バルーン・ドッグ」や、ビルバオ・グッゲンハイム美術館のエントランスを飾る巨大な植物アート「パピー」などで名を上げたジェフ・クーンズも、2010年に「BMW M3 GT2」のアート・カーを製作し、偉大な芸術家たちと名を連ねている。

photo: BMW ジェフ・クーンズが2010年に手掛けた「BMW M3 GT2」アート・カーは、同年のルマン24時間レースに出場したレーシングカーだった。

今回のプロジェクトでは、ワンオフだったアート・カーの守備範囲を一歩踏み出し、世界99台限定の「特別仕様車」として販売することを試みた。BMW Japanに割り当てられたのは1台で、オークションによる入札形式で価格が決定、落札代金は全額が慈善団体の「メイク・ア・ウィッシュ・ジャパン」に寄付される。

最初の一台はすでにニューヨークのクリスティーズでオークションにかけられ、475,000ドル(約6000万円)で落札されたという。

photo: Seiichi Hashimoto

あまり予習もなく展示会場に向かった筆者は、このTHE 8 X JEFF KOONSの外装がデカールや、いま流行のラッピングを活用して仕上げられているものだとばかり思っていた。

しかしながら、実際目にした車両は、すべてのディテールを丹念なマスキングや磨きを施したペイントにより、単なるデザインを超えた工芸品として完成していた。

BMWによれば、塗膜は最大250ミクロンの厚さに制限され、つまり無用な塗り重ねは許されていない。塗装はBMWが主に上級モデルの量産を実施するドイツのディンゴルフィン工場で実施され、塗色はすべて他の量産モデルでも使われている11色から選ばれている。その所要時間は285時間におよぶという。

万が一、ぶつけたときのことを考えれば普通の人にはなかなか勇気が持てないが、BMWは「毎日乗れるアート・カー」とその品質と耐久性に自信を示している。

photo: Seiichi Hashimoto

ところで、BMW Mは今年設立50周年だそうで、それを記念して歴代のアート・カーのうち9台を集めた展示会がルクセンブルクで現在、開催されているという。

BMW brings together 9 out of 19 BMW Art Cars in Luxembourg.

筆者はミュンヘンのBMWミュージアムやLAのピーターセン・ミュージアム、あるいはBMWクラシックの秘密のアーカイブで何度となく歴代のアート・カーと対面してきた。

芸術とクルマがとても率直なかたちで融合している姿を見るのは、双方のファンとしてはなんというかとても和む。

今回のジェフ・クーンズのクルマのデザインを好むかどうかは別として、アートとクルマのコラボレーションというのはどんどん推進してほしいし、そうした試みはどんどんポピュラーなものになっていくだろう。

クルマといえば、ひとつの塗色に銀色のホイールと黒いタイヤ、というワンパターンが当たり前だが、今後「ぶつからないクルマ」が当たり前になっていく中で、個性的なエクステリアにこだわる試みは徐々に普及するのではないだろうか。

photo: Seiichi Hashimoto

PICKUP