LONG-TERM TEST

サマータイヤで、雪山へ

第2回 2004年式 購入:2019年1月 購入時走行距離:76,820km 現在走行距離:91,985km 燃費:9.1km/ℓ

加納 亨介 BMW330Ci 2022.06.11

まさかこのクルマがレポート車になるとは思っていなかった。そもそも友人から10万円で譲ってもらったベンツ190Eを味わい尽くして飽きたから、なんとなく代替を考え、なんとなく選んだクルマである。

借りている月極駐車場に屋根はなく、ボディカバーも掛けず、下は砂利敷だ。購入したときはそんなことはなかったのだが、窓枠のメッキモールは白っちゃけ、ボンネットのエンブレムに至ってはいつの間にかハゲちょびんになっている。これまでの3年間にいくつか不具合があって修理費が掛かっているが、メンテナンスコストの話は後回しにして、今回はサマータイヤでの雪山訪問について書く。

最近の春スキー事情

私はスキーが好きである。とくに春がいい。ほどよく暖かい雪山を薄着で滑走し、大汗をかく。汗に当たる風が気持ちいい。

サマータイヤの330ciで行くスキーは道中新鮮かつ快適。ルーフ上方の白い物体はみつまたロープウェイ。フロントガラス越しに見える白いクルマはスキー仲間のトヨタ・アルテッツァ。彼は真冬もこれ(FR)で来る。トランクに200リッターの水を積んでトラクションを稼ぐそう。

写真は新潟県の湯沢町にある「かぐらスキー場」の駐車場だ。時期は5月中旬。山の緑に包まれて見にくいが、330ciのルーフの上あたりにロープウェイが見える。それに乗って着いた先は「みつまたスキー場」で、そこからさらにゴンドラで上がったところにあるのが「かぐらスキー場」だ。最高標高1845m。日本有数の営業期間の長さを誇り、今年は5/22までやっていた。

ハイシーズンなら並行所有のスキーエクスプレス、BMW X1 xDriveにスタッドレスタイヤを着けて行く。しかし同じ道をいつも同じクルマで行くのは飽きるので、4月中旬あたりから330ci(サマータイヤ)の出番を狙う。後席の背もたれが畳めるのでスキー板も問題なく積める。

もちろん油断は禁物だ。行く3日ほど前からウエザーニュースで気温や降水量を気にし始める。前日には群馬・新潟県境にある国道17号三国峠のライブカメラをチェックする。ここの路面がドライなら経験上OKだ。道中はもちろん、スキー場の駐車場にも雪はない。

X1が10年落ちであるのに対し、330ciは18年落ちである。ダンパーやサスペンションブッシュがヤレているのか、路面の不整に遭遇するとガタガタと安っぽい感触がする。この点X1の方が上質だ。はるかに剛性感がある。

というのは走り始めてすぐの第一印象で、程なく気分が変わる。330ciのほうがトータルでは快適なのだ。何しろ着座位置が低い。ボディが同じだけ揺れるなら、着座位置は低いほうが揺れない。X1は上質だが揺れる。最低地上高の高いSUVの宿命だろう。

エンジンの世代で微妙な違い

エンジンの感触も330ciのほうがいい。X1はN52型、330ciはM54型である。吹け上がりの感触や室内に届くエグゾーストノートなどが一世代分違う。むろん古いほうがいいのである。というか好きだ。

かつてE34型の535iに乗っていたことがある。まだ丸目4灯の頃の5シリーズだ。SOHC2バルブ、鋳鉄ブロックの3.5リッター。現在に連なるBMW6気筒とは系譜の異なる、いわゆる“ビッグシックス”である。元を辿れば1960年代まで遡れるエンジンらしい。速くはないし燃費も悪いが、スムーズな中にキメ細やかな粒状感を感じさせる味わいが素晴らしかった。“シルキーシックス”の称号はもともとこの系統のエンジンに与えられたものなのである。

なんだかビーエムオタクみたいになってきたが、当人にそのつもりはない。私の愛車道は、安価な中古車を比較的頻繁に買い替える式だ。カーセンサーでいろいろソートしているうちに、どういうわけかBMWになってしまうことが多いだけだ。

編集長にくっついてメディア向けの試乗会に参加したり、広報車両を借りて乗る機会が今も時々ある。「今どきの軽はけっこう上質」「最近のトヨタ車の剛性感の高さはハンパない」ことは実感として知っている。スキーエキスプレスとしてX1を買ったときも、最初はもっと経済的な近頃のクルマを検討した。「軽油はどの程度の寒さで凍るのか」「いっそヴェルファイアで車中泊」なんてことを考える段階があった。なのに結局はBMWになってしまう。X1の前はX5だった。免許歴30有余年、買ったクルマは12台。うち半分ほどはBMWである。

下の写真は、新潟県と福島県の県境にある奥只見丸山スキー場に行ったときのものだ。時期はゴールデンウィークの後半。行き慣れた湯沢と違って土地勘ならぬ“道勘”がないので、念のためスタッドレス付きのX1で行った。道中も駐車場も雪はなく、地元勢を中心にサマータイヤが大勢だった。まぁそうだろうとは思っていたが、油断は禁物なのである。

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