LONG-TERM TEST

おしゃれ泥棒

【第3回】 2015年式 購入:2022年1月 購入時走行距離 11,400km 現在走行距離 18,465km 燃費10.6km/ℓ

J.ハイド レクサスNX 200t Fスポーツ 2022.10.09

心躍る日々

NXの購入に至ったのは、実は昨年末に別の人気絶頂だった国産SUVを試乗した事に端を発する。ギリギリではあったが、そのクルマが自宅マンションの立体駐車場に収まることを確認したものの、そこで購入検討の食指はピタリと止まった。自宅の駐車場区画は2階にあり、出庫時に上から降りて来るのだが、その際にその新型車がなんとも鈍重に見えてしまうからだ。

直前の試乗時、ダッシュボード周りに日本語漢字表記が多いことが、やや気を削いでいたせいもある。ハードウエアとしては、非常に洗練されていることは頭では理解しているものの、外出時に自分の車にドキドキしない日々をこれから数年も過ごすことは、看過できなかった。

photo: J.ハイド 斜め前からのサイドビュー。ソニックチタニウムのボディラインは、暮れかかった街の色に映えると思う。

2014年、デビュー時に初めてみた初代NXのデザインは、当初はやり過ぎのように感じた。妙に釣り上がり気味のヘッドライト周り、大きなスピンドルグリルのフロントマスク。そして数センチばかりボデイから突き出た処理のリアライトなど、頭の中の都市型SUVというケレン味たっぷりのエクステリアには、とても高い評価を下せなかった。試乗車のカラーが無難なホワイト系であったのもその印象を強くしたのかもしれない。

一方、インテリアは、レクサスがそれまでに新しく試みていた、ひな壇型のセンターコンソールが上質に昇華され、様々なスイッチ類のタッチ&フィールが大変好ましいと感じた。何よりBMWやボルボなど、同クラスの輸入車以上に触り心地の良いステアリングとシフトノブ、直感的に分かりやすい押しボタン式に空調システムにはその当時から感心させられた事を記憶している。

以上が8年前の試乗時の印象だが、今回購入してから気がついた初代NXのデザイン細部について、他のメディアではあまり語られてこなかった視点で報告しよう。

photo: J.ハイド さらに日が沈むと、Fスポーツならではのメッシュタイプのスピンドルグリルが妖しく反射する。

細部に宿るレクサス

初代レクサスNX Fスポーツはその面積とメッシュデザインのバランスが絶妙に良いように思える。ヘッドライトも落ち着いて良く見ると鋭さの中に丸型の瞳を備え、涙袋のようなウインカーなど、いかにも「生物の顔」としてのフロントマスクが構成されている。それ以外にも、実用的な容量を確保しながらスマートな印象も与えるCピラーやリアフェンダーの張り出しなど都市型のSUVとして新型が出ても色褪せるどころか、街の景観がむしろ追いついてきたように思える。

加えてアッパーミドルセダンのGSから2012年に設定されたボディカラーである「ソニックチタニウム」は、あたかもこのNX専用色のようだ。UXではコンパクトすぎ、GSやRXでは間延びしているかのように見えることが往々にしてあるが、NXではうまく纏まっているように感じられる。結果街中でもソニックチタニウムはGSでもRXでもなく、NXに多く見かける気がする。このNXを購入して半年ちょっと。妙齢の知人たちから、「新車ですか?いい色ですね」と6年落ちにもかかわらず何度も言われたのは、決してお世辞ではないと思われる。

エクステリアの中でもっとも驚いたのが、夜間時に近づくとほんのり灯るドアノブのウェルカムライトだ。もちろん前車のボルボV60クロスカントリーやXC60でもウエルカムライトはドアノブやインテリアに備わっていた。が、初代NXのそれは、ドアノブの形状とも相まって、非常にシャープに光る。これは昼間の試乗では判らない点で、パルクフェルメのメンバーたちが、「できれば試乗には一晩かけるべき」という意見で合致している事に通じる。

また撮影のため細部をチェックしていた時に、感心したのはインテリアの皮革内装を固定しているボルトだ。六角レンチの穴を取り囲むように「LEXUS」の文字が丁寧にも放射状に3つ刻み込まれている。多くの部品がトヨタ車と共通ではないかと揶揄され、確かに施錠の際のリモコンの反応音などは他のトヨタ車の多くと変わりはない。しかし見えないところに一手間かけている事を発見すると、オーナーとしては開発陣の心意気を感じてしまう、そんな好例である。

photo: J.ハイド 新型では形状が無難になってしまったが、初代のドアハンドルはあくまで鋭角。蛍のようなウエルカムライトがドライバーを迎える。

暗くなるまで待って

初代NXは2017年にマイナーチェンジを受け、細部で様々な意匠変更があった。外観上の大きな部分がヘッドライトのデザイン変更である。この変更は単なる角形3灯デザインへの統一だけではなく、ステアリングの切れ角にともなって照射エリアを変更するアダプティブ機能が加わったので、ある意味言う事なしの「改良」である。しかし、同様の機能は丸型のヘッドライトでも他メーカーでは実装されているし、角形3灯では「瞳」のようなものは感じられない。結果、ややロボット的となり、生物の「フロントマスク」のイメージから遠のいたのは個人的に残念な部分だ。

またダッシュボードの空調スイッチも、押しボタン式からローリング式に変わっており、左手での運転中の瞬間的な操作や寒冷地で手袋をはめた際の操作性には、疑問が残る。

もちろん、10.5インチに拡大されたナビ画面やその操作のためのトラックパッドが大きくなり、何よりも自動ブレーキをはじめとする安全装備が、今でも第1級のレベルと言える最新型に進化したことは、マイナーチェンジ後の大きな美点だ。

しかし、できるならマイナーチェンジ前の美点もうまく活かして欲しかったと感じるのは、都合の良い要望なのだろうか? 令和に入ってのフルモデルチェンジで、デザイン面が劇的に進化しなかったのは、初代NXのデザインがいかに時代を先取りしていたかの証であろう。

8年前の試乗時にエクステリアに違和感を感じてしまった自己の不明を嘆きながらも、今年オーナーになって初めて細部のデザインモチーフに驚かされる、初代NX。

自宅の駐車場のエレベーターが夕暮れ時に降りてくる。車へ近づくたびに灯るドアノブの光を見ると、気分が少し高揚する自分がいる。

次回は、2万キロを超える初代NXの乗り心地について報告する。

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