STORY

クルーザー・モデルがさらに充実したハーレーダビッドソン2025年モデルに乗る

PF編集部 2025.05.01

2025年モデルのハーレーダビッドソン・ラインナップにおける最大のトピックは、中核をなすクルーザー・モデルの広範囲なアップデートだ。

エンジンがすべて117キュービック・インチ(1923cc)にアップグレードされ、チューニングはモデルにより3種を用意。吸排気とコンピューターのセッティングによる差別化に加えて、ハイアウトプット・モデルはカムシャフトのプロファイルが異なる。

クルーザー・モデルとしては初めて、ロード/レイン/スポーツの走行モード選択が可能になったことも新しい。加えて、クルーザー全車に、コーナリングABS(C-ABS)、コーナリングトラクションコントロール(C-TCS)、ドラッグトルクスリップ制御(DSCS)、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)からなる電子制御安全装備パッケージ(RDRS:Reflex Defensive Rider Systems)が標準化された。

全モデルでクルーズコントロールが標準装備となったほか、灯火類もヘッドライト、ウインカー、テールランプがフルLED化され、視認性の向上とバッテリー消耗の抑制が図られている。

Street Bob®:251万3000円〜257万5100円(税込価格。塗色により異なる。以下同)。日本仕様の標準仕様はホイールがキャストタイプとなる。

シンプルで無骨、そして軽快――Street Bob®

Street Bob®は、ハーレーダビッドソンのクルーザーシリーズの中でも、“シンプルで無骨、そして軽快”というコンセプトを体現するモデルである。2025年モデルでは、他のクルーザー同様、従来の114(1868cc)から排気量が拡大されたMilwaukee-Eight® 117 Classicエンジンを新たに搭載し、最大出力約91HP(68kW)/5020rpm、最大トルク156Nm/2750rpmを発揮する。従来よりトルクが向上し、街中でも余裕のある加速が楽しめるようになった。

Street Bob®の最大の特徴は、何よりもその軽さとシンプルさである。装備を必要最小限に絞り込んだことで、車重はクルーザーの中でも最軽量級の約286kg(走行時)に抑えられている。これは、同じ117エンジンを積む他モデルと比較しても20~40kg軽い。その結果、取り回しは非常に軽快で、Uターンや街中での取り扱いでもストレスが少ない。

Street Bobはミニエイプハンドルや短いリアフェンダー、ソロシートを備えたワイルドなボバースタイルが特徴で、日本のライダーにも「スタイリッシュ・ボバー」として高い支持を得ている。

また、見た目にもその“引き算の美学”が貫かれている。スリムなタンク、ミニマルなメーター類、マット仕上げのペイント、細めの前タイヤ、ソロシートなど無駄を削ぎ落としたカスタムスタイルが、純正状態で完成しており、カスタムベースとしても高い人気を誇っている。

乗ってみると、117エンジンの力強い鼓動を感じながらも、軽量ボディとの組み合わせにより「操る楽しさ」が際立つ。特に都市部での信号待ちからの加速や、ストップ&ゴーが多い環境では、ハーレーらしさと実用性のバランスが実感できる。2025年型では減衰特性を最適化したサスペンションはやや硬めで、路面の凹凸を拾いやすい場面もあるが、これも含めてストリートバイクらしい荒々しさを演出する一因となっている。

Street Bob®は、“初めてのハーレー”として理想的であると同時に、ベテランライダーにとってはカスタムの余地が広く、走りのベース車としても優れた1台である。その質実剛健なキャラクターは、派手さよりも本質を重んじる人にこそ響く。

Low Rider® S:300万800円〜320万9800円

走りで選ぶハーレー――Low Rider® S

ティアドロップタンクやヘッドライトカウル等、このモデルに伝統的なスタイルを備えるLow Rider® Sの2025年モデルは、ハイパフォーマンス仕様のMilwaukee-Eight® 117 High Output(H.O.)エンジンを搭載しており、最大出力114馬力(85kW)/5020rpm、最大トルク128 lb-ft(約174Nm/4000rpm)という、ハーレーのクルーザーラインナップでもトップの動力性能を誇る。

このエンジンはSE8-511カムシャフトを採用し、高回転域での伸びとパンチ力を重視した設計とされている。組み合わされる2-into-1タイプのエキゾーストシステムも、高効率な排気と軽快なサウンドを実現しており、走るためのハーレーと呼ぶにふさわしい仕様だ。

走りが自慢のローライダーS。ブレーキもフロントダブルディスク(4ピストン固定キャリパー×2基)で制動力を強化している。

キャスター角が小さく、スポーティな倒立式の43mm径フロントフォークを備える車体は、ロー&ロングを基本にしながらも、俊敏なハンドリングを披露する。リアサスペンションは他モデルより車高を高めたロングストローク仕様(56mmストローク)でコーナリング時のバンク角を確保しており、実際リーンアングルは左右とも31.3度と他のクルーザーより深く倒し込みが可能だ。300kgを超える車重を感じさせない安定したコーナリング性能は、このクラスでは異例ともいえる。

スタイリングも洗練されており、ブラックアウトされたパーツや小型フェアリング、ミニマルなメーターまわりなど、ストリートファイター的なテイストが際立つ。

Low Rider® Sは、ハーレー伝統の鼓動と現代的なライディング性能を高次元で両立させた、「走りで選ぶハーレー」としては最も完成度が高い一台である。

Fat Boy®:327万5800円〜333万9600円

圧倒的な外観と重厚な乗り味――Fat Boy®

ソリッドディスクホイール、極太タイヤ、ワイドなフロントフォーク、ロー&ワイドなプロポーションと、どの角度から見ても“重厚感”が溢れている。マットな質感の塗装やクロームパーツのコントラストが際立ち、停まっているだけで街の景色が引き締まるような存在感を放つ。

Fat Boy®は、ラインナップ中、唯一無二の存在感を持ち続けている、「ハーレーの顔」ともいえるモデルである。2025年モデルではMilwaukee-Eight® 117 Customエンジンを搭載、最大出力103HP(77kW)/5020rpm、最大トルク168Nm/3000rpmで、他のバージョンより低中速重視の特性となっている。

Fat Boy®はその名の通り極太タイヤと存在感のあるホイールが特徴。前後とも18インチ径の「レイクスター」ソリッドディスク風アルミホイールを装着し、フロントタイヤ160/60R18・リアタイヤ240/40R18という圧倒的なワイドタイヤを履いている。

ライディングポジションは足を前に投げ出すスタイルで、「王座に就いて走る」ような乗り心地だ。重量は約317kgとかなり嵩むが、直進安定性は極めて高く、高速道路ではまるで鉄の塊が滑っているかのような重厚な走りが味わえる。サスペンションはフロントに49mmデュアルベントバルブフォーク、リアは隠し式モノショックで、ストローク量は43mmとやや短めである。一方で、リーンアングルは限られるため他モデルに比べ低速域での取り回しやUターンにはやや難があるが、それも含めてこのバイクの個性であり魅力でもある。

圧倒的な外観と重厚な乗り味を備えたFat Boy®は、スペックだけでは語れない、「一目惚れさせる力」を持ったバイクである。

Heritage Classic:324万8300円〜341万3300円

1950年代を彷彿とさせるクラシカルな佇まい――Heritage Classic

Heritage Classicは、ハーレーダビッドソンが長年培ってきた「アメリカン・クルーザー」としての伝統と品格を、そのまま現代に受け継ぐモデルである。2025年モデルはStreet Bobと同じMilwaukee-Eight® 117 Classicエンジンを搭載。約91HP(68kW)/5020rpm、156Nm/2750rpmと、ラインナップ中では比較的穏やかで扱いやすい、長距離走行やツーリングを主眼とした仕様となっている。

クラシカルな外観を持ちながら、2025年モデルでは足回りにも現代的改良が加えられている。

最大の特徴は、標準装備された脱着式ウィンドスクリーンとスタッズ飾り付きレザーサドルバッグによる“旅仕様”のパッケージ。大柄なフロントフェンダーやレトロ調のライトハウジング、クロームパーツを多用した外観は、1950年代を彷彿とさせるクラシカルな佇まいを保っている。一方で、LEDヘッドライトやABS、クルーズコントロールなどの装備は最新技術に基づいており、見た目以上に「最新のバイク」としての機能性も高い。

乗り味は極めて穏やかで、ゆったりとしたポジション、風を防ぐ大型スクリーン、適度な鼓動感が相まって、長時間のクルーズでも疲れにくいはずだ。車重は330kg前後と重いが、ツーリング・モデルに比べれば明らかに扱いやすい。

Heritage Classicは、旅を愛し、歴史を纏うライダーにこそふさわしい。「走ることそのものを楽しむ」ことを忘れたくないすべてのハーレーファンに向けた、真のクラシック・クルーザーである。

Sportster® S:199万8800円〜215万2800円

従来のハーレーの文脈とは一線を画す、異色の存在――Sportster® S

Sportster® Sは、従来のクルーザーモデルとはまったく異なる設計思想に基づいて開発されたバイクであり、その革新性こそが最大の魅力である。

その最大の特徴は、空油冷のミルウォーキーエイトではなく、水冷のRevolution Max 1250Tエンジンを搭載している点にある。DOHC4バルブ・可変バルブタイミングなどの現代的技術が投入されたパワーユニットは、最高出力121HP(90kW)/7500rpm、最大トルク125Nm/6000rpmと高回転域まで使える設定になっているが、伝統的なハーレーと同様に強力な低中速トルクも兼ね備える。トルク重視でゆったりと回るミルウォーキーエイトとは対照的に、回して楽しい・加速して刺激的なエンジン特性を実現しており、ライディングにダイレクトな爽快感をもたらす。

車体に関しては、エンジンをフレーム構造の一部として活用し、車体の構成部品を大幅に削減した軽量・コンパクトな車体設計が施され、車重は約228kgと、クルーザーモデルより50〜100kgも軽く、取り回しやハンドリングのしやすさにおいては圧倒的な優位を誇る。さらに、倒立フロントフォークやリンク式モノショック、Bluetooth接続に対応したフルカラーTFTメーター、トラクションコントロール、ライドモード切替(スポーツ/ロード/レイン/カスタム)、コーナリングABS、2025年モデルから標準装備となったクルーズコントロールなど、他社の最新スポーツバイクと同様の電子装備が標準で搭載されている。

2025年モデルではエンジンとマフラーが全面ブラックアウト仕上げとなり、燃料タンクにチェッカーフラッグを思わせる「チェッカーV」デザインの新メダリオンが追加された。

デザイン面でも新しさが際立つ。Sportster® Sは市販車としては異例なほど低く、短く、タイトに引き締まったプロポーションで構成されており、スポーツネイキッドやカフェレーサー的な要素を持ち合わせている。これは“ハーレー=アメリカンクルーザー”という既成概念を打ち破る、大胆な挑戦でもある。

2025年モデルは、リアサスペンションのトラベル量が拡大したことで、従来型のように路面に打ち付けられるようなハードさが乗り心地から排除され、ずいぶん快適になった。シート高は据え置きのまま、リアホイールトラベルが51mmから82mmへと約60%増加したという。それでも、一般的なハーレーダビッドソンが想像させるゆったりした乗り心地とは完全に一線を画してはいるが。

価格面では、Milwaukee-Eight® 117エンジン搭載のクルーザー・モデルのほとんどが300万円を超えてくるのに対し、Sportster® Sは200万円を切るレベルから用意される。

しかしながら、Sportster® Sは「軽さ」「速さ」「現代的装備」「アグレッシブなデザイン」において、従来のハーレー製クルーザーとは明確に一線を画しており、新しい世代のライダーに向けて提案された先進型のハーレーである。ゆえに、単に価格が安いからという理由ではなく、“選ぶ理由”がはっきりと存在するバイクと言える。

今回のニューラインナップの主役がクルーザー・モデルであることは揺るがないが、ライダーが重視するポイントに応じて、最適なモデルは大きく変わるだろう。個人的には、Bluetooth接続やナビ表示対応といったインフォテインメント面が充実し、新しい息吹を感じさせるSportster® Sは、かなり魅力的に映る。

BLUE SKY HEAVEN(ブルースカイヘブン)2025年も横浜で開催、5/10(土)〜11(日)

ハーレーダビッドソン ジャパンが主催する日本最大級のライフスタイルフェスティバル「BLUE SKY HEAVEN(ブルースカイヘブン)」は、モーターサイクルカルチャーと音楽、食、ファッションが融合した多彩な都市型イベントである。昨年から会場をみなとみらいやベイブリッジを臨む開放的なロケーションの横浜・山下ふ頭に移転。イベントではm-flo、横山剣(CRAZY KEN BAND)といった人気アーティストのライブによりジャンルを超えた音楽体験を創出。会場ではハーレーダビッドソン試乗体験やスタントショーも実施され、バイクファンにとっても見どころの多い構成となっている。さらに、全国のクラフトバーガーが集まる「ハンバーガーフェス」や、アメリカンカルチャーをテーマにした物販ブースも並び、食と買い物も存分に楽しめる。また、能登半島地震の復興支援を目的としたチャリティパレードも実施され、イベントを通じた社会貢献にも力を入れている点が特徴だ。ハーレーファンに限らず、音楽好きや家族連れなど幅広い層が一日中楽しめる新しいスタイルのフェスティバルとして、注目を集めている。

名 称: BLUE SKY HEAVEN 2025 (ブルースカイヘブン 2025)
主 催: ハーレーダビッドソン ジャパン株式会社
後 援: 横浜市、一般社団法人横浜港ハーバーリゾート協会
日 程: 2025 年5 月 10 日(土)~11 日(日)
会 場: 山下ふ頭 特設会場(神奈川県横浜市中区山下町)

詳細はイベントページへ。
https://blueskyheaven.jp/

PICKUP