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ピュアEVのプチ・ジープ「アベンジャー」日本でも発売

PF編集部 ジープ・アベンジャー 2024.09.29

ジープブランド初の電気自動車(EV)として、「アベンジャー」が2024年9月26日に日本で発売された。ジープの伝統的なブランド価値を保ちながら、電動化を推進することを試みた、その特長と性能を説明する。

ジェリー缶のX字からインスパイアされたエクステリアデザイン

アベンジャーと聞いて、昔を知るファンなら2000年代の中型乗用車「ダッジ・アヴェンジャー」を思い出すかもしれない。三菱ギャランをベースとするこのサルーンは日本にも導入されたことがある。さらに歴史を振り返れば、1970年代にはヒルマン、クライスラー、タルボットの各ブランドで発売されていた。クライスラーの欧州を絡めたマルチブランドのさきがけとなるネーミングでもあったわけだ。

英語を直訳すれば「復讐者」「正義の味方」のような表現となるアベンジャーが、いま時代の流れを考えた末の正統派コンパクトEVとして登場するのはなんとなく奇妙なようにも思えるが、伝統あるブランドが新しい試みを導入するうえで、いわばとっておきの名前を与えたかったということかもしれない。

新型の外観は、ジープブランドの象徴である「7スロットグリル」をフロントに配置し、ヘッドランプよりも前面に出すことで衝撃からヘッドランプを保護する機能を持っている。また、力強さを演出する盛り上がったフェンダーが特徴で、オンロードやオフロード問わず存在感を示すデザインが採用されている。リア・ライトは「X」型を基調とし、これは「ジープ・レネゲイド」にも見られるデザインで、ジェリー缶の刻印からインスパイアされたものである。

アベンジャーは、SUVらしい堅牢な印象を与えつつも、コンパクトな車体設計が特徴で、特に都市部での取り回しに優れている。また、車体下部には360度のボディ保護機能を備えており、バンパーやフェンダーの設計により、オフロードでの衝突から車体を守る構造が採用されている。

インテリアの隠れキャラを探せ

インテリアは機能性を考慮したデザインであり、計約26リットルの収納スペースが確保されている。ダッシュボード下部や大型センターコンソール、ドアポケットなど、収納スペースは多い。また、ラゲッジルームの容量は355リットルであり、実用的な空間を確保している。

内装デザインには、多くの遊び心が取り入れられており、フロント/リアウィンドウ、フロントスポイラー、テールゲート、ルーフレール部分に隠れキャラクターが存在するなど、オーナーが車を楽しむための工夫が施されている。

パワートレインと走行性能

ジープ・アベンジャーは、54kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードでの一充電航続距離は最大486kmに達する。都市部や長距離ドライブにも十分対応可能といえる。また、バッテリーは車両下部に配置されており、オフロード走行時の下からの衝撃をアンダーボディのスキッドプレートで保護する設計が採用されている。

アベンジャーは前輪駆動車でありながら、ジープのオフロード性能を引き継ぐべく、「Selec-Terrain®」と「ヒルディセントコントロール」が標準装備されており、ノーマル、エコ、スポーツ、スノー、マッド、サンドの6つの走行モードが用意されている。これにより、さまざまな路面状況に応じた走行が可能となる。

坂道へのアプローチアングルが大きい

ジープブランドの一つの象徴である走破性は、アベンジャーにも継承されている。具体的には、アプローチ角が20度、ブレークオーバー角が20度、ディパーチャー角が32度、最低地上高が200mmを超える数値を達成しており、これは同ブランドの「レネゲイド 4x4」に匹敵する性能である。これにより、都市部での駐車場の急な傾斜やオフロードでの険しい地形にも対応できる設計が施されている。

さらに、サスペンションシステムはダンパー減衰力を20%増加させ、従来モデルに比べてボディの上下動や横揺れを大幅に軽減しており、乗り心地の向上が図られているという。また、車両重量は1570kgに抑えられ、軽量化を通じたエネルギー消費低減が図られている。

コネクティビティと運転支援機能

ジープ・アベンジャーには、10.25インチのオーディオナビゲーションシステムが搭載されており、Apple CarPlayおよびAndroid Autoにも対応している。また、専用の「ジープ・モバイル・アプリ」を使用することで、車の位置情報の確認やリモートでのドアロック/アンロック、バッテリー残量の確認が可能である。

運転支援機能としては、アダプティブクルーズコントロール(STOP & GO機能付)、レーンポジショニングアシスト、レーンキーピングアシスト、衝突被害軽減ブレーキ、ブラインドスポットモニターなどが標準装備されている。

充電システムとエネルギー効率、補助金

ジープ・アベンジャーは、100kWの急速充電システムと、70kWの通常充電システムを備えている。この充電システムは、極端な温度条件でも耐えるよう設計されており、-30℃から40℃までの範囲で動作可能である。また、ヒートポンプも搭載されており、極端な気候条件でも航続距離を10%向上させる効果がある。

さらに、空力特性にも優れ、全面投影面積は2.25 m2、空気抵抗係数は0.338と、クラス最高レベルの効率を誇る。これにより、電気消費量はWLTCモードで100kmあたり11.1kWhという優れたエネルギー効率を達成している。

ジープ・アベンジャーは、日本国内で「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象となっており、補助金額は65万円。これにより、消費者にとってより購入しやすい価格設定となっている。アベンジャーのメーカー希望小売価格は580万円(税込)で、特別仕様の「Launch Edition」の価格は595万円(税込)とされる。

さらに、ジープ・アベンジャーを購入した先着500名には、「Jeep Chargingカード」が提供され、全国の充電スポットで普通および急速充電が6か月間無償で利用できる特典も用意される。

アクセサリーパーツと限定モデル

アベンジャーの発売に合わせて、デザインアクセントとなる純正アクセサリーパーツが発売される。例えば、「X-camo」デザインのサイドミラーカバーやインテリアミラーカバー、センターコンソールカバー、プレミアムフロアマットなどを用意。また、新型の登場を記念して150台限定の「Jeep® Avenger Launch Edition」が発売される。ブラックペイントルーフや18インチアルミホイール、イエローダッシュボードなど特別装備が施されている。

マスコット・ボーイ

ジープ・アベンジャーは、ジープブランドの伝統を受け継ぎつつ、「フィアット600e」などと共有するステランティスの電動アーキテクチャを利用しながら現代の電気自動車市場に適応するため、デザイン、走行性能、エネルギー効率、運転支援機能、コネクティビティなど、多岐にわたる工夫を施したコンパクトSUVだ。

いわばジープ・ブランドのマスコット的存在。ジープ唯一のピュアEVとして、しかもジープ・ブランドとしては価格が安価であることから、ジープファンのみならず、新たな顧客層にも訴求し、一定の注目を集めることになるだろう。

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