STORY

跳ね馬を愛でる日 Ferrari Racing Days 2023

J.ハイド 2023.08.07

富士スピードウェイがフェラーリ一色に

写真家、J.ハイドです。7月1日と2日に富士スピードウェイで開催された「Ferrari Racing Days 2023」を取材する機会を得たので、レポートします。

私はランチアを2台を約9年に亘り所有していましたが、フェラーリを所有した経験はありません。かなり以前に試乗をした際も、非日常性から自分には縁がないものと感じていました。一方で、前職時代に本社の工房やフィオラノのテストコースの撮影に同行したことがあり、F1中継にも関わる中で、フェラーリの別格としての存在を常に認識していたのは事実です。

写真家を目指すようになったのも、現在のフェラーリのF1ドライバーであるシャルル・ルクレールを2019年にオーストラリアGPで撮影できた事がきっかけになりました。また、カメラマンとしてスタートした2021年の「ローマ」の走りのカットは自分にとっても、初期の代表作になりました。

つまり写真家として、以前からフェラーリに関わる機会が度々あったのは大変幸運でしたし、今後も撮り続けたいと願っています。そんな想いが通じてか、今回は幸いメディアとして取材する機会を得ました。

しかし日程調整が叶ったのが直前だった為に、7月2日のみの取材に。前日は霧も出た荒天でしたが、この日は一転し、非常に天候に恵まれました。

今回、まず驚いたのは他のメーカーのサーキットイベントのような走行ルール&テクニックのセミナーと、走行会といった組み合わせとは全く異なる事でした。日本でのワンメイクの年間レース「フェラーリ・チャレンジ」が中核にあった上での、サーキットイベントであるということです。

そのため、メーカーとしてのフェラーリ自体のサポート規模、タイヤを供給するピレリのメンテナンスブースも、さながらスーパーGTのように力が入ったものでした。

象徴的だと感じたのは、F1でも見たことがない、ジアッラ(黄色)のフェラーリのセイフティーカー。これだけでもこのサーキットイベントの特別感が増します。

photo: J.ハイド 我々の席が用意されたラウンジにはレーシングストライプが入った「デイトナ SP3」が展示されていた

爆音のホスピタリティ

パドック上のラウンジのホスピタリティもアルコール類を初めとして軽食も用意されるなど、あたかもF1のパドッククラブのような質の高さ。コロナ禍明けのイベントとして、席は余裕を持って造られており、私が入ったラウンジの真ん中には「デイトナ SP3」が鎮座していました。

VIPの参加客と同じパッケージのツアーで、コース上で勢揃いしたフェラーリのレースカーと一般参加車をまずは拝見。そしてパドックのクローズされたスペースでレースに特化した新型車「296 GT3」の序幕に参加し、その後はパドック内でのメカニック体制、ピレリ社のサポート体制のレクチャーを受けるといった前半でした。

その間も容赦なく「フェラーリ・チャレンジ」のレースカーの爆音が響きわたるのですが、音楽にも例えられるエンジン音を皆で「堪能できる」、そんな感性の人間しか参加しないのがこのイベントの特徴なのです。

後半はこのRacing Daysの歴史を綴ったレースカー達と、ヒストリカルなフェラーリの物語と実車に触れる展示にフェラーリ本社からのスタッフの解説が加わります。その歴史と志を知れば、オーナーでなくともエンツオ・フェラーリに尊敬の念を抱いてしまいます。

photo: J.ハイド 性能だけではなく、サーキット走行時のメンテナンスの容易さなど「296 GT3」の特徴を説明するフェラーリ本社の女性スタッフ

ラストはサーキットに並ぶ本番直前の「フェラーリ・チャレンジ」レースカーのラインナップをスタートグリッドで見る事ができ、ツアーは終了となります。サーキット好き、フェラーリ好きなら必ず満足するのではないか?と思われる内容でした。

そして何より新車価格3000万弱から始まるフェラーリのオーナーと子供連れも含めたその家族が、和気藹々とこのイベントを楽しんでいる姿が印象的でした。中にはサーキットに並ぶ愛車のシートに座り、とびきりの笑顔で楽しんいる初老と思われるご夫婦も複数いらっしゃいました。

私は結果として「Ferrari Racing Days 2023」を通じ、フェラーリというブランドの3つの強さを目撃できたのだと思います。

photo: J.ハイド デモ走行したF1マシンも含め、富士スピードウェイのフロントローをフェラーリが彩る

跳ね馬への憧憬

まず第1に、どんな歴史的な価値のあるフェラーリであってもどんどん乗ってもらいたい、フェラーリもそうだが、クルマは走らせることがその本質である。そして初期モデル含めてその「愛馬」のサポートをできる体制がフェラーリにはあるし、将来もそれは続くという「約束」。

第2に、サーキットこそがフェラーリのパフォーマンスを最大限に発揮できる場所である。そしてサーキット走行のために、フェラーリはF1を頂点とした最新のレーステクノロジーを取り入れた新型車を発表し続けているという「事実」。

第3に、サーキットに集うフェラーリは限りなく美しい。その上で官能的なエンジン音を全身で感じる事ができるといったエモーショナルな「体験」。

「約束」「事実」「体験」と、右脳と左脳の両方に圧倒的に語りかけてくる特別な存在、それがフェラーリというブランドなのです。その強さもあってか、コロナ禍においても、販売と利益は世界で、そして日本でも過去最高に推移したと報じられています。

叶うならば「跳ね馬を愛でる」資格を、今からでも持てないだろうか? 縁遠いと思っていた筆者でさえ、そのような気持ちに火がついてしまう。「Ferrari Racing Days 2023」は、クルマ好きとって、そんな素晴らしいイベントでした。

PHOTO GALLERY

PICKUP