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慶應義塾體育會自動車部 #01

栁 蒼太 慶應義塾體育會自動車部 2022.11.12

新入生から見た自動車部

「モノ文化」の発展・継承をミッションのひとつとして掲げるパルクフェルメは、「インターン編集者」として慶應義塾體育會自動車部(以下、慶應自動車部)に所属するふたりの学生を迎えることになった。「体育会」と聞くと、球技や武道、陸上競技などを思い浮かべる人は多いと思われるが、「自動車部」というのはいったい何をしている組織なのだろうか。前篇では、彼らが参加する競技や大会を紹介する。

本記事(前篇)を書いているのは半年前に入部した現役学生部員だ。ここでは率直に、自動車部について自分がどのように感じているのかをつづりたい。なお、後篇は“先輩”にあたる2年生の学生により書かれている。

1931年の創部以来、時代の変化や自動車技術の発展に伴い慶應自動車部が取り組む内容は姿を変えているが、現在は、ジムカーナ、ダートトライアル、フィギュアの三種目に主に取り組んでいる。

「ジムカーナ」とは?

ジムカーナは舗装路で行われるスピード行事である。パイロンによって任意に設定されたコースで行われるパイロンジムカーナと、ミニサーキットなどで行われるコースジムカーナに分類される。

なお、日本自動車連盟(JAF)は日本国内の多くのモータースポーツの規則を制定し、競技の統括を行っていて、JAFの定める「スピード行事」に分類される。スピード行事とは1台ずつ別々にコースを走行してタイムを競う競技のことで、2台以上が同時に走行する競技は「レース」と呼んで区別している。

直近で慶應自動車部は、2022年度鈴鹿市長杯全日本学生ジムカーナ選手権大会において男子団体の部で2位、男子個人の部で優勝の記録を残しており、部の目標である、団体優勝に向けて一歩ずつ近づいている。

ジムカーナ練習にて出走を控える試合車たち

「ダートトライアル」とは?

ジムカーナ同様に1台ずつコースを走行するスピード競技で、未舗装の路面上に任意に設定されたコースで行われる。100㎞/hを越える速度から減速をしたり、スラローム走行したりするなど、高度な技術が要求される。ダート路面は路面摩擦が小さいため、タイヤと路面の間に大きなスリップ角が発生しやすく、いわゆるドリフト走行を行ってタイムを削る。

直近では、2022年度全日本学生ダートトライアル選手権大会において、慶應自動車部が男子団体2位の成績を残した。

ダートトライアル試合時の一枚。

「フィギュア」とは?

ジムカーナやダートトライアルが、タイムだけを指標とする競技であるのに対し、フィギュアは運転の正確さとタイムで優劣を決める競技である。地面に引いた線やコース内に設置されたパイロンに触れないように正確に車を動かしていく。なお、試合ではその当日にコースが発表されるクローズドコース形式が取られる場合が多く、選手らは試合直前にどのように車を動かすのかを考える「慣熟」を行う。決して一つの移動方法ではなく、様々な手段が繰り広げられるところが観戦の際の見所だ。

イタリア半島で汗を流す

われわれは慶應義塾大学日吉キャンパス内にある「イタリア半島」と呼ばれる練習場において日々、訓練を行っている。ここにはジムカーナ・フィギュア競技の練習ができる広い舗装敷地があり、ほかの大学の自動車部を見渡しても数少ない整備専用のジャッキアップ・スペースも有する。

試合の日程を鑑みた上で、練習メニューが作られる。各部員は、「練習担当」や「車両担当」などの役割をそれぞれが担っており、練習担当の上級生が下級生の運転指導を行うことになっている。

競技の特性上、一般道での走り方とは大きく異なる部分が多々あり、免許を取り立ての新入生は戸惑うことも多いが、上級学年から指導されることで、着実に実力をつけている。特に、クラッチ操作は試合車によって踏み方が異なり、細心の注意を払うことが難しく、苦戦していることが印象に残っている。

圧倒的なチーム競技

競技は、ドライバーと車のみの戦いではない。

新入生歓迎会で競技の見学をした際、単に自由奔放に走っているように見えた車。しかし、入部をすると、一台の車を走らせる為に、何人もの部員が汗を流して、試合車を組み上げて整備をしている様子を目の当たりにした。車両担当の先輩の知識量は膨大で車のすべてを知り尽くしており、乗車するドライバーの特性や乗り方に合わせて最適に調整することができる。もちろん、部内には車両担当だけではなく、練習担当、広報、会計など他の役職のメンバーもいて、いずれも車を走らせることに全力になっている姿に感銘を受けた。

「2022年度 関東学生対抗軽自動車5時間耐久レ-ス」において優勝を獲得時の記念写真

慶應らしさ

車を愛する若者が年々少なくなっていると叫ばれている中、その数少ない同好の士が集いし自動車部。大学の垣根を越えて、その「車愛」はつながることも多くあり、交流も盛んだ。

ところで、大会を観戦していると、それぞれの大学の姿勢の特徴がよくあらわれる。優勝を個人で狙う大学もあれば団体として狙う大学もある。我々、慶應はチーム全体で優勝を狙う姿勢をとっている。それは、部員全員が、競技をチーム競技であることを強く認識し、それがあって初めて、優勝を狙えると考えているからだ。個人戦団体戦問わず、車を取り巻く部員のつながりは強く持ち続け、ドライバー、車をサポートするのだ。

整備のためにジャッキアップされている試合車

入部して半年を経て

今、私は入部をして半年近く経って、自動車部の一員として徐々に馴染めるようになっている。新入生ではなく、一人前の部員として活動が出来ている気がする。日々の活動で大変なことだらけではあるが、得られる達成感はたまらない。車を操る楽しさは止められない。だからこそ、胸を張って、この競技を続けていきたいと思っている。

後篇では、筆者の先輩にあたる2年生の学生が弊部についてより詳しくご紹介させていただく。学生の熱き思いが詰まった「自動車部」に関心を寄せていただけると、この上なくうれしく思う。

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