Der FREIRAUM デアフライラウム “自由な余白” ♯06
法規の壁
横川 謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2022.09.27自動車は、バラバラでは輸入できない
VWゴルフの日本屈指のマニアが、Golf Caddy Camperをなんとか自分で手に入れたい、というエピソードの第6話です。オーストリアで見つけた理想的な 個体 を輸入して日本“ ”で走らせたいわけですが、そこにはなかなかに高いハードルが......
“キット状態のGolf Caddyをオーストリアから輸入して、自作のキャンパーシェルを架装する 。”
そんな企てを実行するにあたりまず思い浮かぶのは、完成までに越えねばならない関連法規の壁がいくつもあるであろう、ということ。作ったはいいけど公道を走れない、では目も当てられません。早々に現れた一つ目の壁は、「自動車は、バラバラでは輸入できない」ということ。正確には「バラバラで輸入したらナンバーが取れない」ということなのですが。
Golf Camperプロジェクト、ここまでの経緯をいったんおさらいいたします。
・初代Golf CaddyをベースにしたCamperの写真をたまたま目にして一目惚れ。
・検索をかけまくるも、実車はどうやらプロトタイプしか存在しない模様。
・オーストリアに似た車輌を持っているコレクターを発見。
・現地へ行って、実車を見て、心に火が点く。
・自作しか道はなさそうということでベースとなるGolf Caddyを探す。
・国内で売り物を見に行くが、カスタム車輌だったためベースとすることを断念。
・オーストリアのコレクターから「ほぼ新車、だけどバラバラ」の Golf Caddyのオファーをもらう。
という流れで、クルマの個人輸入に手を出すことになったわけです。
「では、実際にどんな手続きが発生するんだろう」とあれこれ検索するのですが、世の中にまったく同じことを企んでいる人がいるはずもなく、ネットで断片的な情報をつなぎ合わせることにも限界を感じたその時、ふと目に入ったのが「自動車なんでも相談所2021」という催し。神奈川県自動車会議所が主催しているもので、そのタイトルを信じれば、私の雲を掴むような計画の相談にも乗ってくれるかもしれない 淡い期待を胸に......秋の横浜へ出かけて行ったのでした。
横浜駅東口の新都市プラザというエリアにたくさんのブースが並び、登録から売買まで、文字通り自動車に関する「なんでも相談所」が出現。やる気に溢れる私は、一番乗りで会場へ着くや否や「キャンピングカーを自作したい」と告げると、受付のおじさんは驚く風もなく、「では○番のブースへどうぞ」と流れるように通されました。私は、プロジェクトの概要についてまとめた企画書を元に、これまでに浮かんできたいくつもの疑問点をひとつひとつ聞いてみました。対応してくれた方の感触では「さらに詳しく確認しなければならない点は多々あるが、実現不可能な話ではない」ということで、ひとまず安心。
より詳細で確実な情報収集のためには、「自動車技術総合機構」へ行くべし、とご指南いただき、大変有益な相談会になりました(蛇足ながら、ティッシュにマスクに消毒液にサランラップ と、紙袋いっぱいのお土産まで頂戴し、公的な相談会の底力を体験したの......でした。もちろん無料ですので、クルマ関連のことで途方に暮れている方にはオススメです。)
さて、より確度をあげるために「自動車技術総合機構」の門を叩くことになるのですが、門を叩くといっても独立した建物に赴くわけではなく、いわゆる車検場にあるいくつかの棟の二階、という立地。ここは、検査レーンで長いハンマー持ってクルマを検査する方々が詰めている場所で、レーンが閉まる16時45分から17時半までの間、検査官自らが相談に乗ってくれるのです。レーン作業がおしている時は、アイドルの出待ちよろしくひたすら検査官のお戻りを待ち、そうすると相談時間も減ってしまう、という「あくまで空き時間にお相手したいただく」感じなのです。
記念すべき初回相談、テーブルについてひととおり計画書を見た係の方は、やおら立ち上がり事務所の奥へ向かうと、ベテランとお見受けする検査官を伴い、分厚い書籍を抱えて戻って来られました。
「キャンパーシェルのオーバーハングは、ホイールベースの2/3以下に」とか、「キッチン部分の室内高は160cm以上必要」などなど、設計上欠かせない重要な情報が次々と出てきます。ノーマルのGolfより25cmほど長いGolf Caddyのホイールベースで計算すると、オーバーハングは1750mm以下になります。聞いて良かった! なんとなく、でデザインしなくて本当に良かった!
キャンパー部分と、ベース車の個人輸入のふたつのトピックがあるので、数名の方が入れ替わり立ち替わりアドバイスをくれました。そして、冒頭の言葉です。
「詳しくは税関に確認して欲しいけど、バラバラの状態で輸入してしまうと登録できないんですよ」
さらなる詳細は、横浜税関とのやりとりで明らかになります。こうして、自動車を取り巻く様々な法規との格闘、いや、勉強が始まったのでした。