扉の向こうは横乗り天国
石川 千夏 2022.12.13旅を愛するPF編集部の石川千夏は、3年にわたりスノーボードの専門学校に通い、計5年にわたって夏も冬もスノーボードといった生活を送り、時にはインストラクターも務めていた。今は自らが主体で滑るというよりも、冬になるとみんなでわいわいスノーボードを楽しむスタイルにチェンジした彼女が、わざわざ自宅から距離のあるショップで道具選びをしているという。その理由について語ってもらった。
20歳の時に初めて足を運んだプロショップ「SUFFICE」(サファイス)。今の時代、スノーボードのギアなら、多くのショップが集まることで有名な神田や、セールイベント、オークションサイト等でも購入できるにもかかわらず、決して安く販売されているわけではないプロショップに、私はかれこれ7年も通い続けている。
気軽には入れなさそうな雰囲気のその店は、JR南浦和駅からバスで15分程のところにあり、スノーボードやスケート、通称「横ノリ」と呼ばれる商品を専門に扱っている。「横ノリ」と聞くと少々怖いイメージを持つ方も多いと思うが、中にはそれを超える想像以上に強面な店長、前 英樹さんがいた。前さんは筋トレやバイクが好きで、以前はカワサキのバリオスやゼファー、スズキのGSに乗っていたとか……
6年前に内装をリニューアルし、ぐるっと1周で見られるようにした店内のこだわりは、やはり一際目立っているスケートランプだそうで、壁に飾ってあるスケートボードには、あのスノーボード界のレジェンド國母和宏をはじめとした、数々の有名ライダーのサインが!!
ずっと気になっていた店名の由来は、英語で「満足させる」という意味で、横ノリ業界に精通したプロの店員さんからのアドバイスには、実際に私も毎回大変満足させて頂いている。
最近のスノーボード業界事情
トレンドファッションと同じで、こういった業界にも流行り廃りはある。最近のスノーボードをとりまく環境で特徴的なのは、年齢層が以前と比べて上にも下にも広がったことだ。
親子でスノーボードを嗜む家庭が増え、道具の進化によって体に負担をかけない滑りができるようになったことから、年齢を重ねてもある程度長く続けられるようになった。
実際に私がインストラクターをしていた際にも、50代中盤とみられる女性が、ハーフパイプでジャンプやスピンなどする競技のレッスンを受けにきたことがある。私の母ももう60歳になるが、毎月必ずスノーボードに出かけては1日中滑っている。
また現在は、「グラトリ」といった、平らなバーンで繰り出すトリック全般や、板のエッジを使って雪面を彫るように滑るターンの「カービング」など、ただ滑るだけではないスノーボードの楽しみ方もブームとなっている。これはYouTubeなどのSNSが普及し、初級者でもHow toをみて気軽にチャレンジできるようになったことが背景にある。
好きなデザインや性能によって選ぶべきギアは決まっていくが、今はグラトリが容易にできる柔らかい板の販売が増えているようだ。私もスノーボードイベントで販売スタッフとして店頭に立った際、グラトリの板が人気だとか、オリンピックを観てハーフパイプに挑戦したい人が増えているなど、時代に合わせたトレンドがあることを実感している。
だからプロショップはいいんだ
私の中の板を選ぶ基準はこうだ。
「渋さの中にかわいい要素もあるグラフィック」「板の形状はキャンバー」「板のフレックスは普通程度」だが、
なかなか条件を満たす板に出会えず、今季の板の購入に悩んでいたところ、長年通ってきた店だからこそわかる、私の趣味に完全に合う板をおすすめしてくれた。
グラフィックはもちろんのこと、「ハイブリッドキャンバー」といわれる、一般的な滑りから、パーク、パウダー等オールジャンル遊びやす形状に、脚力の弱い私でも操作しやすい普通のフレックス。すぐに購入を決めた。
スノーボードは楽しいというのは前提として、そこに人と人との輪があるからこそ、もっと楽しいスポーツになるのではないかと私は思う。
通い始めてから7年経つが、ショップライダーを目指して真剣にスノーボードに向き合っていた時期から、スノーボードから離れていた時期、そしてまたお店に行くようになってからも、暖かく迎えてくれる店長さんに常連さん、そして新しい顔ぶれの方々。そんなアットホームな雰囲気もまた、プロショップの良いところなのでは?
定期的に上達するためのレッスンや、仲が深まるツアーを開催したり、若い世代でもスポンサーを獲得するという夢を掴める大会の主催など、スノーボードをより楽しめるような機会も作ってくれるのが、ここSUFFICEだ。