LONG-TERM TEST

七年目の本気

【第4回】2015年式 購入:2022年1月 購入時走行距離 11,400km 現在走行距離 22,208km 燃費10.5km/ℓ

J.ハイド レクサスNX 200t Fスポーツ 2022.12.21

レクサスCPOは車検も有利

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model:御木ももあ photo:J.ハイド 車高が少し高い都市型SUVに乗ると、ドア開口部の余裕から乗り降りがスマートにしやすいのが美点。NXも同様だ。

購入した際、NXの価格が走行距離の割にリーズナブルだったことには、2つ理由があった。

一つは初回登録年が2015年であり、すでに7年が経過したモデルであったこと。そしてもう一つは2022年の10月末で車検切れだったことだ。

CPO(レクサス認定中古車)であるから納車時はかなりの部品が交換されるし、2年の長期保証にあたっては半年ごとの購入デイーラーでの点検が義務づけられている。しかし、当方の我儘に付き合ってくれる心暖かい担当氏から「長期保証のために車検をデイーラーで行うという条件はない」ということを確認したため、外部の車検サービスで安価に上げることも視野に入れた購入であった。

案の定、月1000キロ程度の走行では9カ月で不具合も出るはずがなく、10月下旬の車検では部品交換を全く必要としなかった。結果、自宅から15分の某大手カー用品チェーン店で、諸費用+自賠責+車検整備費用でほぼ7万円という嬉しい誤算。7年目の中古車としては信じられないぐらいに安く済んだ。

浮いた予算で、家族とのちょっといい食事も楽しめるという訳だ

photo:J.ハイド 筆者のFスポーツにはワインレッド&ブラックのレザーシートが奢られている。たっぷりとした後席も手動でリクライニングができ、家族の評判も上々である。

レクサス的上質、しかしあと一歩

購入から約1万キロを乗って、妻をはじめとする家族に前席、後部座席に乗ってもらった感想では、初代BMW X1、ボルボXC60、同V60クロスカントリーなど今までのSUV車の中で、一番乗り心地が良いとのことだ。

乗り心地とは、そもそも何か?

15年ほど前にタイヤメーカーの広告を担当する立場だった自分は、制作スタッフに「乗り心地」を説明する際、NVHという例えを出した。いわゆるノイズ・バイブレーション・ハーシュネスである。

加えてSUVは車高が高いため、走行中の様々な入力によってボデイが揺すられる。高い重心のため、コーナーでの傾きが大きく感じられる。当時はSUV専用を謳うタイヤも数多くラインナップされた時期だった。初代NXも御多分にもれずSUV専用であるブリヂストンのDUELERを装着している。

まずNVHについては、2022年の新型NXと比較してもさほど大きな差は感じられない。舗装路での内外のノイズはもちろん、大型FF車にありがちなフロアの振動、アイドリング時のバイブレーションについても、今夏に九州の撮影で丸3日レンタルした現行型カムリハイブリッドとの差は、ほぼないと言ってよいレベルだ。

高速道路などで強い入力を受けた際のハーシュネスに関しても、全体のボデイ剛性からか、ガツンと来る衝撃を感じたことは皆無で、分厚いゴムに覆われた感触と言える。自分の記憶の中では先代トヨタ・クラウンのレベルにあり、現行のマツダCX5より上質に感じられる。

ただし、タイヤの経年変化などの理由で、荒れた舗装路でのノイズはやや大きいかな?と思うので、3万km近くになる来春には交換を予定している。

SUV独特のボデイの揺れ、傾きに関しても、通常のドライブシーンではコーナリング初動の傾きや、ウネリの大きな道路でのピッチングなども良く抑えられている。同乗者が不快と感じる事はほぼないはずだ。

所有していた同じ2014年モデルのボルボXC 60は、今思えばコーナーではかなり大きくグラリと傾いていた印象だ。その後、背の低いボルボV60クロスカントリーに乗り換えた際のコーナリングの安心感と初代NXはほぼ同様に感じるのは、Fスポーツグレードで採用されたパフォーマンスダンパーのせいかもしれない。

ただ意外なことに歩道から車道に降りる際には、左右に大きく揺すられる。これは今まで経験したSUVや新型NXと比較してもかなり大きい。初代NXでは1845mmに収められた車幅のせいなのか、柔らかくのストロークの大きなメインダンパーのせいなのかは、判断に苦しむどころである。

いずれは、さらに大きなクラスの新旧のレクサスRXとも比較してみたい。

会話が弾む静寂

以上が初代NXの乗り心地のレポートだが、8年前にデビューしたSUVとして今日のレベルを持ってしてもかなりの高水準にある。スムーズな電動リクライニングと快適なシートヒーターを備えた出来の良い前席シートと相まって「非常に好印象」というのが結論だ。

しかも自分にとって前車がディーゼルだったせいもあり、ガソリン車である初代NX 200t Fスポーツの静粛性には舌を巻くばかりだ。本連載でも、度々同乗者が「ハイブリット?」と質問する事を記載したが、決して脚色ではない。加えてレクサス基準であるからアイドルストップ時の外部からの侵入音もごく僅かで、室内は静寂に包まれる。

結果、パッセンジャーと落ち着いて会話できる仕立てだと思う。

model:御木ももあ photo:J.ハイド 走行中の静粛性は勿論、静止中のアイドルストップも極めてスムーズ。遮音性の高さから室内は無音と錯覚するほどで、同乗者との会話も快適である。

運転が楽しい自分にとって、クルマとの対話も大切だが、パッセンジャーである家族への気配りもそれ以上に重要である。上質な乗り心地と静寂な室内という点だけでも初代NXに乗り換えた恩恵は計り知れない。

助手席の同乗者がいつも笑顔でいてくれるなら、運転にも心のゆとりが生じ、安全に寄与することは言うまでもない。2年後の車検でも、多分浮気には至らないと感じている。

次回は、7年経った初代NXのナビゲーションを始めとするユーザーインターフェースと使い勝手について報告する予定である。

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