PF DIARY

お正月は(昼間から)一流ホテルのバーを楽しんでみませんか

田中 誠司 アマン シャングリ・ラ 2023.01.03

新年あけましておめでとうございます。本年もパルクフェルメをよろしくお願いいたします。

学生の頃までは家族の友人が経営する宿や会社の保養所に出かけて、スキー三昧と言うのが定番だった私の正月ですが、出版社に勤めて都心暮らしになり、いまでは正月こそ都心のど真ん中で過ごすのが自分にとっての正解だときめこんでいます。

正月の3日間は都市部のパーキングメーターが全て停め放題というのが嬉しい。ちょっとしたお参りでも親戚に顔を出すのでも、60分以内に帰ってこれるかどうか怪しいケースは多いのではないでしょうか。長時間止めっぱなしにはしないまでも、もう少し場所によってとか融通を聞かせられないものかなと思います。

駐車枠ごとに立っているあのメーターはとても高価で、結局管理のおじさんが毎日集金して回らなければいけない点でも非常にコストがかかっているのは明らかです。あれは何とかならないものでしょうか。警察行政と言うのは融通が利かないのがある意味正しいのでしょうが、住民サービスは別に考えた方がいいと思います。

話はそれましたが、1月1日は百貨店も営業しているお店が少なく、飲食店もやっているところは限られます。それに正月だから昼間から飲みたいじゃないですか(もちろんクルマでは行きません)。そこで穴場なのが高級ホテルのバーやラウンジです。コロナ真っ盛りの時は、人と人が集まり、交わるスペースは営業しないケースが多かったのですが、2023年はそういったところも減ってきているようです。

こぢんまりした中にラグジュアリーで快適なスペースを作り上げたシャングリ・ラ 東京。

今年僕が選んだのは、東京駅の真上のシャングリ・ラ 東京と、大手町のアマン東京でした。高級ホテルというとお値段が気になるところですが、カクテルを頼んでも、ワインを頼んでも、まぁざっくり一杯3000円です。サンドイッチも3000円くらい。

もちろんいつものペースでガンガン行ったらものすごい散財になってしまうわけですが、こういうところはいわゆる席料とか、お通し代を要求してこないので、一杯をのんびりちびちびやっている分にはそう法外な値段にはなりません。

それに、やはり一流のホテルが出してくるワインはクオリティが非常に高いし、グラスひとつとっても延々と眺めていたくなるほどぜいたくなものが出てきます。カクテルも季節であるとか、日本らしい和のおもてなしを意識して工夫がこらされたものを楽しむことができます。

ベーシックなグラスのシャルドネでも香り高くふくよかな味わい。シャンパーニュはどこでいただいても同じ味だけれど、グラスワインには店の品格が露わになる。

一流ホテルの装飾は、モノに関心がある人にとっては非常に興味深いものが多いです。シャングリラのバーの天井にはガラスのオーナメントが無数に輝き、アマンの広大なロビーには足元に水鏡が張られ、和紙と木組の組み合わせが貼られた吹き抜けを映し出しています。

もちろん、30階前後から東京を見下ろす眺望も素晴らしい。そして正月は、外国語でビジネストークを繰り広げる人々の喧騒がなく、なんとなく観光客がのんびりしているのも良い。

ロビーの水盤と吹き抜け、そして33階からの眺望が楽しめるアマン東京のラウンジスペース。クリスマスや新年のカウントダウンには超VIPも姿を現すらしい。

まあ、われわれみたいにのんびりした客ばかりだったらホテルも困るのかもしれませんが、世界の中枢の人々が普段はたっぷりお金を落としているんでしょうから、たまにご相伴に与ってもバチは当たらないでしょう。

去年のPFには、しっかり練り上げた文章と美しい写真を理論立てて組み合わせて、クオリティを高めなければいけないという強迫観念に自分自身が駆られていた部分があったと思います。けれども今年は、モノを語ること、「モノガタリ」に対して、もう少しイージーかつカジュアルに、自分が心地良いと思ったモノやコトをその心持ちのまま、自由に記していきたいなと思っています。

アマン東京を後にして丸の内へ向かうと、すっかり夜の帳が下りていた。

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