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ドローンを知ると世界がわかる #05

J.ハイド 2023.02.14

DIPS2.0シンドローム

真家、J.ハイドです。2022年の12月からいよいよ新飛行登録基盤「DIPS2.0」がスタートしました。筆者も12月下旬でそれまでの全国での包括申請が期限切れになるため、12月中旬から登録入力を開始しました。

特殊な飛行ではない限り、従来のレベルであれば包括申請はスムーズにいくと感じました。一方、新システムのスタートの混雑やUIのもどかしさで、年末年始を挟んで登録まで4週間以上かかりましたが、無事に登録が完了しました。

ネット上でも賛否両論、登録のためのノウハウなど様々な情報が溢れています。

良い面としては、機体登録や操縦者申請が済んでいればDID地区外に関しては飛行計画の「通報」(飛行計画の「登録」がDIPS2.0では「通報」という文言になりました)は、DIPSとFISSに分かれていた従前以上にスムーズに行う事ができます。

本年春までには新設された国家資格を取得する予定なので、また次の機会にご報告します。

冬の日本の海岸は透明度が驚くほど高い。海上はDID地区外だが、地域によっては管理者からの許可が必要となり、その際にはライセンス保持者であることが有利となる。

どうする? 動画編集

空撮で素晴らしい画像を撮影できても、インパクトがあるのは静止画よりも動画だと言えます。しかし静止画と違って動画に編集は付き物。またドローンは機体に騒音となるモーターを搭載していますから、飛行中の音声はまず役に立ちません。少し前までの機体では同時録音機能も搭載されていませんでした。

したがって良い音楽を動画画面につけるのは必須なのですが、個人で楽しむ場合はともかく、YouTubeなどで公開するためには市販の楽曲を使用することはできません。

DJIでも以前、動画を自分のアカウントにアップするとAIが勝手に編集して音楽までつけた動画を自動生成するサービスがありましたが、さほど良い出来ではないことが多く、お勧めできるものではありませんでした。

したがって、ドローンで空撮した素材をある程度気持ちよく編集し、権利がクリアされた音楽をつける作業ができないと、SNS上で公開することは難しいと思った方が良いでしょう。

ここでは、Macに関しての動画編集のポイントをレポートします。

iMovieならMac Book Air M1でも編集は快適に行える。撮影の後に立ち寄ったカフェでも編集が可能だ。操作画面の右上にカラーやフレーミング、音質調整など、以前は上級ソフトでしか出来なかった機能が並ぶ。

まずはiMovieから

静止画編集でAdobeのPhotoshopの名前を知らない人はいないでしょう。同様に、現在プロユースの動画編集ではAdobeのPremiere Pro(プレミア プロ)が一般的です。放送の現場では先行するAvid(アビット)をこの10年で逆転し、今やほとんどの放送現場やCM編集に使用されています。英国では2010年頃から順次放送現場で使用され始め、日本ではNHKに正式採用されたことが大きいと思われます。

また最近では映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の制作現場でのワークフローが、声高にPRされていました。Adobe社のサービスは動画から静止画、例えばPhotoshopなどへシームレスに行き来できることに強みがあります。

必要とするPCデバイスの能力やストレージの容量は大きいのですが、新世代のハードウェアの通信速度と相まって、アマチュアレベルでもストレスは感じにくくなっているのも普及に拍車をかけました。

一方で多機能すぎるためにスマートフォンや、タブレット、13インチ・クラスのノートでは思うように編集機能を活かせず、そのためにPhotoshopなどと同様により軽いソフト「Adobe premiere Rush」が用意されています。

ただしこれらをずっと利用するには月々3,000円弱のサブスクリプション契約が必要になります。趣味の範囲ではやや負担が大きい内容となるでしょう。

そこでまずはMacに標準装備のiMovieの使用をおすすめします。特に数年前から、フレーム枠の変更や簡単なカラーコレクション(動画の色調整)などが可能になり、効果やタイトルのバリエーション以外で上位ソフトのFinal Cut Proの出番がほぼなくなってしまうぐらいの進化を遂げています。

一方のWindowsには「ムービーメーカー」というソフトがあったのですが、現状は残念な事に英語版のみが公開されています。従って日本語で操作するとすれば何らかの課金ソフトが必要になります。

ドローンの購入や資格取得でただでさえ初期費用がかかる中では、動画編集ではまずはMacで無料のiMovieを使いこなし、どうしても不満が出てきたら「Adobe premiere Pro」や「Final cut Pro」に進むことをおすすめします。どちらも4Kでフレーム単位の様々な編集やオブジェクトの削除、タイトルの追加が可能です。

今回の撮影はいずれもDji Air 2Sによるもの。1インチセンサーでRaw現像または4Kから切り出せば、大画面で高精細の画像が楽しめる。

またこの数年でBlackmagic Design社が提供する「DaVinci Resolve」やYouTube用の編集が充実している「Power Director 365」、「Filmora 12」などが注目されています。ただし、いずれも使用制約がない状態にするには何らかの課金が必要になります。そのためこれらの導入も、一旦はiMovieでの編集を一通り経験してから、をお勧めします。

実際にハイドがiMovieで制作した新進ピアニスト、吉原麻実さんのYouTube動画が2022年の海外のピアノコンクールで1位、2位に入賞しています。

どうする?楽曲

編集ソフトはとりあえずiMovieでOKだとして、次のハードルは楽曲です。

筆者の場合、動画をある程度セレクトしたら、次にそのイメージに合う楽曲を選び、音楽に合わせる形で動画を編集して行きます。

先に記載したように、クラシックの場合は著作権がない曲も多いのですが、プロの演奏家によるものは演奏そのものに著作権がある場合が殆どです。

そこでフリー音源サイトを物色する訳ですが、国内のサイトでは、なかなかドローン独特の浮遊感のあるイメージ通りの楽曲は見当たりませんでした。

結局行き着いた先は、海外の楽曲提供サービスの「Artlist」でした。月間でおよそ10ドルを払うと、世界中で数百の作曲家が提供する楽曲が自分のSNSへ使用可能となります。(2023年1月現在)

「Artlist」からお目当ての楽曲をMP3でダウンロードし、数年撮りためた空撮画像を自社のWEBサイトで公開していますので、本コラムの最後のリンクからご覧ください。

次回は国家資格の動向と、最初の機種選定についてレポートします。

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