STORY

実車降臨!(前編) Der FREIRAUM デアフライラウム “自由な余白” ♯16

あいつは生きていた。

横川謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2023.07.18

出てしまったのです。あいつが。

Golf Bischofberger Camperの自作に情熱を燃やし、ベース車両となるGolf Caddyをオーストリアの博物館から購入し、現在まさに日本へ向けて航海中というところで衝撃の展開が! 連載打ち切りか!? ……いちばん驚いたのは当の私ですが、お読みいただいている方々にとっても、にわかには受け入れ難い展開かと思います。

幻と思われていた、Golf Caddy ベースのBischofberger(ビショフベルガー)Camper が売りに出たのです。しかも、私が欲しいと流れ星にまでお願いした“ポップアップルーフ仕様”が!

ある日、携帯に着信した“New results for your searches(お探し車両の新着情報)”。いつものようにリンクを開いて飛び込んで来たのはまさかの画像。

「なっ!!!」

これは一刻を争う出物に違いない! 様々なことが頭をかすめましたが、私は脊髄反射のスピードでドイツの出品者にダイレクトメールを送っていました。あぁぁ、あるのか。あったのか!

"Volkswagen Caddy 14d Bischofberger Camper Selten"

Selten とは、ドイツ語で“珍しい”という意味です。さらっと書いてあるけど、そんなの嫌というほど知ってる! 珍しいどころじゃない!! でも、買ってどうする? ドイツに置いておくのか!? いや、そもそも日本から買えるのか? 売ってもらえるのか!?!?!?

0.2秒ほどの間に、それくらいのことを考えたと思います。そして、これはまた運命のいたずらか、天の計らいか、一週間ほど先に欧州へ行く用事があり、現物を見る機会が持てそうな状況だったのです。

その情報がなぜ来たかというと、数年前から、ドイツ、北米、南アフリカの中古車サイトで「売り物のCaddyが出たらお知らせメール」の登録をしていたのです。まだ買うつもりでもなく、様子を知りたいという思いからでした。月に何台かfor sale情報が来て、世界では様々な状態、仕様のCaddyが盛んに取引されているなぁ、いいなぁ、と、玉石混交のリストを眺める日々。

そうこうしているうちに、素のCaddyをオーストリアのGolfコレクター、ヨーゼフ氏から買うことになったのはこれまでの連載で書いてきた通りで、コンテナの手配などを具体的に考え始めたあたりで、今回の衝撃を伴う報せが舞い込んだのです。

Bischofberger Camperとご対面

返事はすぐに来ました。「ドイツに来たら連絡ください。見られる機会を作ります。」と。日本からの連絡などスルーされても無理はない、と思っていたので、内心驚きながらもまたすぐに返信。「買ってドイツに置いておくのか、日本へ送るか分からないけれど、一度見せてください。」と。

もし買うと決めたとしても、現役でドイツを走っているクルマ、ミニカーのように簡単に日本に送るワケにもいきません。それに、ヨーロッパというキャンピングカーで旅するには最高の舞台に今現在クルマがある訳で「買ってドイツに置いておく」というのが良いのではないか、という思いもよぎりました。

ドイツの友人に連絡し、彼の地でクルマを買うにはどんな手続きが必要か、置いておくとしたら場所はあるか……などなど相談。しかし、いちばんのネックはドイツに現住所が無いことで、どうやってもドイツで「所有」することは叶いそうもありません。それはヨーゼフのいるオーストリアも同様で、置き場所はあるけどナンバーを取ることが出来ない……。

結論を出せぬまま渡航の日を迎え、用事を済ませたのちレンタカー(もちろんGolf)で南ドイツの町へ赴きました。ミュンヘンから3時間ほどの“ブライザッハ・アム・ライン”。ライン川に面したブライザッハ、という名のその町は、橋を渡ればそこはフランス、というドイツの西の端に位置します。

町に入り、はやる心を抑えつつ、指定された番地へクルマを走らせます。ゆるいカーブを抜けると……いました! 広めの駐車場のような場所で、午後の陽射しの中に佇む特徴的な白いボディ。Golf Caddy Camper Bischofberger!

レンタカーのゴルフの奥に見える白い物体がGolf Caddy Camper Bischofberger。

クルマを停め「着きました」とメールすると、男女が近づいて来ます。

“Es freud mich sehr Sie kônnen zu lernen”(初めまして)

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