STORY

Der FREIRAUM デア フライラウム “自由な余白” #01

そのストーリーは突然に

横川 謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2022.04.15

幻のGolf Caddyキャンパーを造る

VWゴルフマニアの著者による、幻のゴルフキャンピングカー”ビショフベルガー”を独力で造り上げる過程を紹介する連載です。

個人輸入、エンジン換装、FRP加工に改造申請。

自分の自動車趣味にはなかった言葉が、昨年来、急に現実味を帯びて来ました。手に入らないキャンピングカーを、自作してみようと目論んでいます。

きっかけは、たまたま目にした一枚の写真。初代VWゴルフが好きで、キャンプツーリング好きな私は、Golf Caddy(ゴルフのピックアップ版)をベースにした、写真の一体型キャンパーに、文字通り一目惚れしたのです。このクルマについて知りたい、欲しい、とあれこれ検索してもほとんど情報が出ず、ようやくたどり着いたドイツ語のスレッドを解読すると、この形状のゴルフキャンパーはどうやらプロトタイプが作られたのみで、市販されなかったという情報に行き当たったのでした。1980年前後の出来事のようです。

私は、初めて自分で買ったクルマ(ゴルフ2)に「ドイツ製小型実用車」の洗礼を受け、以来、ゴルフばかり6台を乗り継いでいます。現在ガレージには、ゴルフE(1980)、ゴルフ・カブリオ・クラシックライン(1992)、ゴルフ7GTI(2013)の3台があり、この他に様々なスケールのミニチュア・ゴルフが、およそ5000台ほどひしめいています。

1974年の誕生以来揺るがないコンセプトで、世界の小型車のベンチマークであり続けるゴルフ。特に、G.ジウジアーロのデザインとウォルフスブルクの技術が結晶した初代は、スクエアに見えて実はふくよかなスタイリング、21世紀の交通事情においても何ら不足のないパフォーマンスとハンドリングで、眺めても運転してもこの上なく味のある一台です。そんなゴルフ三昧の日常に、ある日突然飛び込んできたのが冒頭のGolf Caddyキャンパーでした。

このキャンパーを作ったのは、かつて西ドイツにあったBischofberger(ビショフベルガー)というメーカー。すでに廃業しており、公式サイトなどもありません。ピックアップの荷台に載せるタイプの“トラックキャンパー”は市販されていたようで、何枚かの画像や、ネットのフォルクスワーゲン・コミュ二ティ内の書き込みが散見されたのですが、圧倒的にこの「一体型ボディ」が格好良く、手に入れたいという想いは募るばかり。

そのうち「実際、実用性はどうなんだろう」という興味が湧いてきました。サイズ、居室の広さ、設備の使い勝手などを検証してみたくなり、まずはミニチュアを作ってみることに。折よく、時代は3Dプリンターの性能が上がってきて、かなり精密なものが作れるようになっており、とりあえず既製品のゴルフのプラモデルと3Dプリントのキャンパーシェルを組み合わせてみることにしました。

まずベース車となるGolf Caddy自体を3DCADでモデリング、キャンパーシェルについては、集めた画像からサイズを割り出し、Golf Caddyに合わせる形で作っていきます。この時はまだ、「実車を作ろう」とまでは思っておらず、1/20のミニチュアを作ることがゴールでした。

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