LONG-TERM TEST

日常で乗るマクラーレン #07:あえてミシュランを選ぶ

マクラーレンMP4-12C 2013年式 購入:2017年5月 購入時走行距離 11,500 km 現在走行距離 34,527km 燃費7.6km/ℓ

橋本誠一 マクラーレンMP4-12C 2024.12.27

最も重要な消耗部品の選択

ガソリンや油脂類、ブレーキパッドなど、消耗品の中でも1番効果を体感できるのはタイヤだろう。クルマ好きであれば初めに手を出す部分も、やはりタイヤかと思う。

マクラーレンMP4-12Cのメーカー推奨、いわゆる承認タイヤはピレリ「P ZERO」で、フロント235/35R19リヤ305/30R20の組み合わせ。AWDも多くなった今となっては、ミドシップであるこのクルマのフロントタイヤはナローなサイズだ。マクラーレンの承認タイヤがミシュランではなくピレリなのは、F1の公式タイヤサプライヤーが2011年からピレリであることからして、当然の成り行きか。

私の感覚では、ピレリというメーカーは70年代後半から80年代にかけてのスーパーカーブームでの「P7」が印象的なプロダクトで、それ以降もスーパースポーツカーやエキゾチックカーに選ばれてきた記憶が強い。個人的かつ勝手な感覚だが、ホイールで言うとOZとブランドイメージが被る。

自身で乗り継いできたクルマでは、90年代前半まではポテンザかピレリを選択することが多かった。だが90年代後半に購入した911(993)で、ミシュラン・パイロット・スポーツを体験してからというものの、完全にミシュラン・ファンになってしまった。

特にグリップ限界域での挙動の穏やかさと、しなやかさ、経年劣化の少なさ、そしてなにより感動したのがウェット性能だ。

特に911においては雨天時のハンドリングのウィークポイントを補ってくれるのは心強かった。なので、それ以降はどうしてもタイヤサイズが選べない場合を除き、ほぼミシュランを選んできた。

そして、承認タイヤでは無いミシュランを選択する。

サーキット走行をメインにし、走行会であっという間に溝を減らしてしまう方々は承認タイヤに拘りは少ないと思うが、一般のオーナーは当然のように承認タイヤを選ぶから、常識的な感覚からすれば今回の選択はレアな行為と言える。

そして、ピレリで言えば「P ZERO Corsa」に相当する、セミレーシングに近い「PILOT SPORT CUP 2」とかなり迷ったが、適正温度の広さやウエット性能など、総合力を考えミシュラン「PILOT SPORT 4 S」に決定した。

承認タイヤ以外の選択にデメリットはあるか?

承認タイヤ以外を選ぶ事のデメリットとしては、タイヤによるトラブルがメーカー保証対象外になってしまう事だが、新車保証期間がとうに過ぎているこのクルマでは無関係だし、PILOT SPORT 4 Sは他メーカー同スペックのミドシップカーの承認タイヤにもなっているのでパフォーマンス的にも問題は無いと判断した。

タイヤ交換はマクラーレン有明で整備の合間に行なってもらった。P ZEROより若干タイヤ幅が大きいとの情報も耳にしていたが、フロント、リヤ共にインナーフェンダーへの干渉もなかったので一安心。サイドウォールのデザインもスタイリッシュだ。

そして、まずはクルマを受け取って走り出した瞬間に明らかにフィーリングの違いを感じた。当たりが柔らかい。

先日まで履いていたタイヤは生産から5年以上を経過したモノだから当然とはいえP ZEROの新品の感覚もきちんと記憶しており、それを踏まえた上でもあきらかにPS4の方がしなやかに感じる。

一般道で、タイヤは適正温度になるのか?

ひと皮むけたところで一般道でのタイヤ温度を、車両に標準装備されているモニタリングシステムで計測してみる。最近は9月中旬というのに最高気温は30度を超える事が多い。路面もかなりの高温だ。

日中の、とあるワインディングロードを法定速度で走り温度をチェックすると、フロント左40°フロント右40°リヤ左40°リヤ右40°、意外にも低い。少しペースを上げて気持ちいい速度で走ってみても50°を超えない。夏場でコレでは冬には最適温度にはなかなか届かないと想像する。

市街地走行をメインとする私などには、やはりCUP 2ではなくPILOT SPORT 4 Sで正解だったと改めて思う。グリップは必要にして充分だし、最近のゲリラ豪雨などで、かなり深いウエット路面を何度も走行しているが全く不安がない。

もうひとつ気づいたのは、ブレーキの初期制動が良くなった事。コレはPS4に限った事では無いかと思うが、やはり劣化したタイヤや、エコに振り過ぎたタイヤは、この辺の性能は当然低くなる。

超高速域からの急制動などはまだ経験していないが、かなり期待出来そうな雰囲気だ。そしてなにより安心して走りを愉しめるようになると、クルマも自分もリラックスした状態になり、気持ちにも余裕が出てくるので安全運転にも役立つ。

想像通りのパフォーマンスが期待できそうなPILOT SPORT 4 Sだが、これから秋冬にかけて気温が低くなってきた時期にどんな変化があるのか?また機会があればレポートしたいと思う。

PHOTO GALLERY

PICKUP