LONG-TERM TEST

今、そこにある幸せ

【第2回】2015年式 購入:2022年1月 購入時走行距離 11,400km 現在走行距離 16,718km 燃費10.7km/ℓ

J.ハイド レクサスNX 200t Fスポーツ 2022.07.10

6月で購入からちょうど半年が経過し、その途中で新型NX250、同350F スポーツといったガソリン車にもディーラー試乗する機会を得たので、初代NX 200t Fスポーツの運転フィーリングをまとめておこう。

味わいのパワートレイン

車のキャラクターを最も印象づけるのはエンジンであるのは、このコラムをお読みの方々なら納得される事だろう。自分の場合はさらに加えるなら、ミッションも含めたパワートレインの出来栄えこそが大切だ、と思う次第である。

photo: J.ハイド スムーズで熟成された6速AT。高速燃費こそ今一つだが都内近郊のドライブでは10km/ℓを割ることはない。その気になれば、手触りの良いシフトノブでギアチェンジも積極的に可能だ。

初代NX200t Fスポーツに搭載されるのはトヨタグループ初の2ℓ直噴4気筒ターボであり、あまりの性能の良さに2017年のマイナーチェンジではモデル名がそれまでの「200t」から「300t」へと変更された。あたかも3ℓなみの性能であるという訳だ。

このエンジンはひとクラス上のRXでもガソリン車の主力であったことから、そのパフォーマンスの高さ、レクサスの並々ならぬ自信が伺える。

実際、アイドリングから3000回転までの静粛性がレクサス流であることはもちろん、初の直噴ターボでありながらトップエンドまで無理なく回せることも、果敢なドライバーにとってはありがたい。

高度に制御されたアイドリングストップ、1650rpmから35.7kgmの最大値を発揮する豊かな低速トルク。さらに加えるならアクセル開度と回転数に比して実際の車速が少しだけドライバーの思惑より上回るため「SUVとして非常に軽快に走る」という印象を抱くことになる。

また、高速燃費ではやや不利な6速ATも、市街地では変速ショックも極小で、あたかも出来の良いCVTといった立ち振る舞いを見せる。

スムーズだが「少しだけ主張する心臓」、それが初代NX 200tのパワートレインだ。

この10年あまりで所有してきた、BMW X1 25iの2.5ℓ直列6気筒、ボルボXC60 T5の自社開発の直噴2 ℓ4気筒ターボと比較しても、パワフルさは互角以上であり、スムーズなATによって都内の交通事情では極めて乗りやすい。2014年型ボルボXC60のミッションは欧州アイシン製8速ATだったから、同時期にデビューした初代NXにも搭載することは可能だったと推測する。が、実際に3年ほどXC60に乗った経験ではボルボの2ℓ直噴ターボと8速ATの組み合わせは、1速、2速のつなぎで若干ギクシャクすることもあり、最近まで所有したボルボV60 D4クロスカントリーの低速トルクが豊かなデイーゼルエンジンとの方が、相性が良いと感じた。

ただ燃費についてはボルボXC60 T5の燃費は13.6km /ℓであり、初代NX200t Fスポーツの13.0km /ℓとの差は僅かのようだが、高速を主体とする自分にとってはやはり給油頻度は多く感じてしまう。

中庸、しかし軽快

ハンドリングに関しては、ミドルサイズのFF SUVにも関わらず、アンダーステアも極小で、快適な感触のステアリングに対する微妙な操作にも、鼻先をスっと変えてくれる。

この初代NXをカメラカーとしてドライブした当サイトParcfermeのスタッフも、一様にその軽快感に感心していた事から、あながち間違っていないと思われる。ステアリングの重さも軽すぎず適度であり、お手本のように高速ではどっしりと安定感を増す。

同じくミドルサイズFF SUVのボルボXC60は直進番長的な性格がやや強く、同V60 クロスカントリーに乗り換えた際のコーナーの安定感に、ホッとした覚えがあったのとは対照的だ。

また、国産の同種のSUVでたまに不安を感じるブレーキに関しても、欧州車なみにストッピングパワー、剛性感とも強力でABSは最後に顔を出すタイプである。先日試乗した新型NXでもほぼ同様の結果だったので、サーキット走行の連続でもない限り不安を感じることはないと思われる。この辺りは当初から世界戦略車としてゼロベースの開発を行なった初代NXの美点と感じる。そして、欧州車とは異なりフロントホイールにブレーキシューの汚れが付着しにくい点も、オーナーとしては嬉しいポイントだ。

さてパワートレイン、ハンドリング、ブレーキそれぞれの要素が高次元であっても、それ以上に重要なのはドライビングポジションを初めとするマンマシンインターフェースの部分だ。このあたりも初代NXはごく普通にシートバックを立てて、自然な体勢ですべての操作系に手が届く。HUDは搭載されていないがメーターの視認性もよく、その気になればパドルでもフロアシフトでも果敢にギアチェンジすることが出来るなど、8年前にデビューしたクルマにもかかわらず完成度は極めて高い。そしてノーマル、スポーツ、Ecoという3つの切り替えモードもあり、どれを選んでも力強く、運転を飽きさせる事がない。

photo: J.ハイド 高速でのクルージングは快適で、全車速追従機能付クルーズコントロールの適切な制御と相まって、疲労感は極めて少ない。

長時間運転をサポートしてくれるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、同時期に極めて完成度が高いと言われた2014年型ボルボXC60のACCより動きが自然で、高速はもちろん首都高でも積極的な利用をお勧めしたくなるほどだ。もっとも、雨や霧の日に過信が禁物なのは言うまでもない。

以上の事から、新型NXのガソリン車と比較しても、実用時の運転フィーリングの違いはごく僅かである。それどころか直噴的な力強さを高めた新型NXの250=自然吸気2.5ℓ、そして350 Fスポーツ=2.4ℓターボ共に、パワートレインの滑らかさではむしろ初代に劣るように思えた。

新型NXで大変好ましく思った点も幾つかある。例えば大きな段差を乗り越える際の身体を揺する挙動はほぼ解消されており、前輪で25mm、後輪で45mmトレッドを広げ、タイヤも225から235と幅広になった事の恩恵が感じられるのもその一つだ。

おそらくだが、新型NXのガソリン車に乗った後に初代NXに乗ってもさほど落胆することなく、むしろその良さを感じる方が多いのではないか?と思われる。
バランスよくまとまっているが、決してツマラナイ訳ではなく、クルマ全体として羽が生えたような軽快さを感じる。

それゆえに、新型NXの納期が約2年と言われる中、高年式初代NXの認定中古車(CPO)人気が高まるのは頷ける結果だ。

次回は、初代NXのデザイン性について触れてみたい。

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