LONG-TERM TEST

邂逅、ふたたび

第1回 2015年式 購入:2022年1月 購入価格368万円 購入時走行距離 11,400Km 現在走行距離 14,721km 燃費11.3km/ℓ

J.ハイド レクサスNX 200t Fスポーツ 2022.04.17

まさか、7年前のモデルを自分が買うとは思っていなかった。

発表時に試乗した際、当時のBMW X3などに比べその出来の良さに驚いた。反面、あまりの鋭角なスタイリッシュさに「日本人が頭の中で考えたSUVだ」という否定的な感想を当時、自分のSNSに書き込んでいた。本音は、近寄り難さを感じていたのかも知れない。

今年、縁あってそんな初代NXに再び試乗し、その魅力に参って購入してしまう事に。実際、毎日のように乗ってみると何ら過不足なく便利でスタイリッシュで快適なSUV、それが2014年デビューの初代NXだというのが、今回の結論である。

この度、連載の機会を与えられたので自己紹介を兼ねて自分のクルマ遍歴を紹介しよう。

1981年学生だった自分が免許を取った際に、家族から親の送迎用にあてがわれたのは、カリーナSRの昭和48年型。まだチョークレバーが残っていた。その後ブルバード910ターボの2台までが家族から託された車で、両車ともハードトップと言いながら、今の基準ではサッシの立て付けがあまり宜しくなく、激しい雨が度々侵入したことを記憶している。カリーナはSUツインキャブが繊細でメンテナンスは欠かせず、910は典型的なドッカンターボだった。

社会人になって初めて自己資金で購入したのがセリカXX 2000GT。非常にバランスの取れた車で、3年後にスープラ2000GT ツインターボへ。国産高級スポーティーカーゆえ意気揚々であった。しかし、当時から自動車専門誌を読み耽っていたため、944ターボを試乗する機会に至る。

それによってステアリングとブレーキの剛性、ボデイのがっしり感に圧倒され、世に言う、輸入車、特にドイツ車は次元が違うという事を肌身で感じてしまう。

それから様々な輸入車を試乗して、当時のサラリーでなんとか買えたのがランチア・デルタ・インテグラーレ。納車早々に、燃料ポンプはじめトラブル続出だったが、「苦労は買ってでもすべき」という徳大寺巨匠の教えに乗っ取り、約5年楽しむ。その次もランチア・テーマ・ターボ16Vとイタ車三昧。ここまでは故郷札幌での話だ。

東京転勤をきっかけにテーマがブレーキの不調を連発したため、次はドイツ車、アウディ100 2.8Vに乗り換えた。快適ではあったがドアロックはじめ意外とマイナートラブルが多く、2年でBMW 528i(E39)へ。新車ではとても買えなかったので認定中古車で約1万キロのものを購入した。その後は320i(E46)、323i(E90)、X1 25iとBMW直6を続けた。適度にカスタマイズを楽しんだあとは自社開発4気筒2Lとアイシン8速ATの出来の良さにビックリしてボルボXC60 T5、そして直近ではV60クロスカントリーD4と続いた。

輸入車を買うようになってからは、モデル末期の新古車や、認定中古車を購入することがほとんどだった。価格がリーズナブルであるし、デビュー直後の新車ではマイナーなトラブルに辟易としていたので、その買い方には疑いは持っていなかった。

今回購入したNXの認定中古車(CPO)は2015年11月登録でありながら走行距離は12,000kmに至らず。内装の程度がそれなりに良いのは想定内だが、驚いたことにエクステリアも信じられないほど傷が少なかった。ディーラーの資料ではフロントスカートに1点とリアスカートにごく小さなスポットが2点のみ。実際にはもはや目視ではわからないような位置についている程度で、初代NX のCPO車がフロントガラスに飛び石の小傷があり、ドアパンチ跡も数多い売物ばかりの中で、圧倒的に良好な個体だった。

グレードは200t Fスポーツ、ボデイ色はソニックチタニウムで、内装はシックな赤を基調にした黒のコンビネーションの本革だ。大いに気に入っているこの組み合わせを、いざCPOで見つけようとすると、発見するのはまず不可能に近い。感触が自然なACCや、電動バックドアがオプション装備されており、ディーラーにて前後ドライブレコーダーもすでに装着済みであった。

photo: J.ハイド 赤いステッチの入ったタッチ&フィールの良いステアリングは、乗降時に跳ね上がるイージーアクセス機能を備える

4年半を伴にしたボルボV60クロスカントリーD4はこの夏に2回目の車検で、タイヤの全交換含めて相応の出費が想定されていたので、次の車をそれとなく物色していた。新V60やS60、それに国産のPHEVも良いかな?と、新型アウトランダーやRAV4などを試乗した。

現在住んでいるマンションの立体駐車場(費用は管理費に含まれている)は全幅1850mmまでに制限されており、ミドルクラスの輸入SUVはNG。カタログ値は1855mmだが車検証表記で切り捨てされて185cmになるRAV4や、日本事情を斟酌してか、1850mm に収められたV60 、S60は問題ないものの、選択肢は意外と少ない。

NXも新型は1865mmであり、仮にパレットに乗ったとしても、車検証では186cmの記載となる。おそらくマンションの理事会で問題になるはずだ。そこで車幅の件も理由にしながら、新型を見る機会に初代を7年ぶりに再試乗した。

初代NXは車の基本が優れていて、数m走っただけで良いものに乗っている感じが伝わってくる。つまりNVHが高度に制御されているのと同時に、ステアリングの剛性も高く感じる。静粛性と2ℓ直噴ターボが低いエンジン回転数から発生するトルクのせいで、多くの人が「ハイブリッド?」という感想を漏らすが、いえいえ、この車はレッキとした100%ガソリン車である。しかも時代に逆行するかのようなハイオク仕様だ。SUVとしておおらかな居住性を持ちながら、クラウンなみの静粛性を発揮するのだから、同乗した家人の「ハイブリッド?」という第一声は無理からぬものだった。

1989年に高級車の静粛性を世界レベルで革新したところからスタートした、レクサスブランドの面目躍如である。

photo: J.ハイド 一見シンプルだが、リアライトの形状は立体的にデザインされている。新型にも通じるリアフェンダーの張り出しはSUVらしからぬ迫力

購入は1月だったので、都内メインとはいえスタッドレスを履かせたかった。しかし空気圧センサーが標準装備される初代NX Fスポーツの場合、ホイールは純正であることが必須となる。幸いオークションでBS ブリザック DM-V3 225/65R17、九分山の純正ホイール4本セットを入手できた。中古タイヤゆえ、不安なきよう納車時にディーラーで点検と装着をお願いした。純正オプションの18インチ切削ホイールに装着されたサマータイヤBS デューラー H/L 850 225/60R18 100Hは、そのまま近所のスーパーオートバックスのタイヤ預かりサービスへ持ち込んだ。

3月半ばには純正サマータイヤに交換したものの、ステアリングのしっかり感がやや増した以外は、歩道から車道へなどの大きなギャップを乗り越えた際の身体を揺する挙動など、SUVであることをスタッドレス同様に感じさせている。

燃費は車載の燃料計では11.0〜11.5 km/ℓ、直近の満タン法では11.3km/ℓで、直噴ターボ4気筒を回すのはハイオクガソリンであるため、今どきとしてはお財布にやや厳しい。ATが6段変速であることもあり、60Lの燃料タンクを満タンにしてもオンボード・コンピューターが示す走行可能距離は600 kmだ。ほぼ同じ2ℓ直噴ターボ4気筒でありながら、これまで乗っていた8速ATのボルボ XC60は給油ごとに1000kmの航続距離が表示されていたのと比べると、燃費には不満をおぼえる。

とはいえ、ECOモードでも軽快で、スポーツモードではかなり俊敏に走るNXは、乗るたびに安心感と楽しさのバランスが取れていると感心させる。   

デビュー時に試乗した際よりも、むしろ時代と街の景観が追いついてきて、否定的な印象はぐんと低くなった。

大人4人が快適に過ごせ、荷物のスペースもまずまず広い。そして、昨年から写真家としての仕事を本格化させた自分にとっては、大型3脚やレフ板、脚立を軽々と飲み込むサブトランクがある事もとてもチャーミングだ。

高級ホテルやリゾート地の駐車場にあっても存在感は十分であり、都内の様々なシーンでもそのボデイは綺麗に映える。故に「満足感」は納期の半年以上の遅れが報じられる新型NXよりずっと高いというのが、初代NXに対する今の私の評価だ。

次回はその運転フィーリングについて詳しくお伝えしたい。

photo: J.ハイド 1650r.p.mから最大トルクを発生する2ℓ直噴4気筒ターボ。6ATの出来の良さと相まって静粛性とパワフルさを高い次元で両立させている。

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