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Der FREIRAUM デアフライラウム “自由な余白” ♯07

「自動車通関証明書」がないとナンバーがもらえない!

横川 謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2022.10.24

「自動車と呼べる状態」って何?

「ほぼ新車、だけどバラバラ」のGolf Caddyをオーストリアの博物館から手に入れた横川さん。しかし、個人輸入しようとする自動車がフレーム&パーツの状態だった場合、そのまま海外から持ち込むと「部品」扱いとなってしまうそうで……。

横浜税関で確認したところ、部品扱いだと「自動車通関証明書」が発行できない、とのこと。これがないと、運輸支局での自動車登録ができない、つまり、ナンバーがもらえません。バラバラのオールド・ミニを輸入したはいいけど、結局登録できず飾るしかなくなってしまった、という悲しいお話も伺いました。涙。プラモデルのようには行かないのですね。

個人がパーツ状態で輸入したものを自動車に仕立てて、がんばって登録するには、いわゆる自動車メーカーとしての認可が必要になるそうで、「不可能では無いが非現実的」な遥かな道のりに……。

というわけで、オーストリアでバラバラ状態のCaddyを「自動車と呼べる状態」に戻さなくてはならなくなりました。今回必要な「並行輸入自動車届出書」の中に“技術基準等宣言書”というのがあるのですが、これが厄介で、窓ガラス、灯火類、ブレーキからシートベルトに至るまで、クルマの各装備や装置が基準をクリアした証明書が必要! とのこと。

技術基準等宣言書。

クルマのサイドウィンドウに印刷された○Eのマークを目にしたことがありませんか? 例えばこれが、協定を結んだ国同士で基準合格を相互認証するための大切な証明書なのだそうです(知らなかった!)。

クルマの機構ひとつひとつについて証明書を用意するのは大変ですが、現地での車検証があるとだいぶ話は変わります。一度認可を受け走っている、ということが並行輸入の際、強力なバックアップになるそうです。なので、オーストリアでの車検証がきちんと保管されているか、ドキドキしながらヨーゼフ氏に確認したところ、写メを送ってきてくれて一安心。あちらの車検証、冊子になっているようで、図解もあって格好いい。

オーストリアの車検証は詳細な図面入り。

どうせ塗装もするし、キャンパーの架装にはキット状態は願ったり、だったのですが……。

「部品」と「自動車」の境目は?

さて、「自動車と呼べる状態」にするために、どこまで組み上げればよいかというのが次の問題。陸運支局でのやりとりで既にお腹いっぱいですが、臆せず税関に相談です。まずは電話で概要を説明して、必要であれば直接出向いて相談、ということになりました。

「部品の状態のものを、どこまで組み立てれば自動車と認められますか?」

用意した資料を事前にメールで送り、職員の方に電話しました。第一声は「ワーゲンにこんな車あるんですか。いいですね~。」というもので、のっけから親身になって相談に乗ってくれそうな雰囲気。

さて、どこまで組み上げれば「自動車と呼べる状態」なのかについては、特に明文化された基準があるわけではなく、コンテナを開けて出てきた物が「自動車」であれば良い……と。まず、タイヤは必要でしょう。ステアリングやシートなんかも無いとクルマと呼べそうもないです。

では、内張はどうなのか? フロントガラスや灯火類は? などなど、リストを作って再度尋ねてみたものの、明確な答えは得られず。ただひとつ「エンジンはかからなくてもいい」という情報は大きな収穫でした。かからなくてよいが「原動機付きの状態」ということが必須だそうです。

エンジンルームの補機類やラジエターなどは、くっついていればよく、取り回しのためのステアリングとハンドブレーキが作動するくらいで行けそうです。ダッシュボードも配線不要、内装もついてなくていいそうです。

以上のやりとりをかいつまんで、オーストリアのヨーゼフに相談すると、「友人がリフトのある工場を持っているからなんとかなる」という力強いお言葉。組み立ては、彼のミュージアム”Golfsrudel”の閉館期間である11月から2月の間になるとのこと。行って手伝いたい……。

そして、輸出入に関わるお仕事をしている友達からは「取り付けなかった部品や、好意で入れてくれたオマケのパーツなども、明細に漏れなく記載!」「でないと密輸入になってしまうので、そこをしっかりするように」と貴重なアドバイスを頂戴しました。”ボディにプラサフを塗った状態の、四輪で転がすことができるCaddy”を持ってくることになりそうです。

普通に中古を買って輸入すればもっとシンプルなんですが「新車で買ってすぐバラされた“1983年で時が止まったままのCaddy“」の誘惑に負けました。

そんな2021年末……これまた想像もしなかった別の誘惑が、折よく私の前に現れることになります。

新たな誘惑?

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