STORY

Der FREIRAUMデアフライラウム “自由な余白” ♯11

キャンパーシェルのポップアップルーフを1/5スケールで試作する。

横川 謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2023.03.08

FRPの成形に初挑戦!

前回は、キャンパーシェルの骨格をどうしようかとあれこれ試行錯誤して、まずは1/5モデルを作ってみよう、という過程を紹介しました。思い通りに強度が確保できる構造が出来上がったら、スチールフレーム(鉄になるのか、アルミなのか)はプロにお願いして、シェル外版は自分で成形しようという無謀なことを考えております。

キャンパーシェルの素材としては、FRP(繊維強化プラスチック)が良さそうです。側面が単純な平面ならば、パネルを組み合わせる工法が使えるのですが、いかんせん惚れたキャンパーの形は側面がゆるいカーブを描いていたり、キャディ本体と繋がる部分が一筋縄ではいかない形状だったりするので、ここはボートの船体やバイクのカウル、自動車のスポイラー製作などで多用されるFRPしかないという結論に至りました。

しかし、当方、プラモデルや木工作ならそこそこの経験はあれど、FRPはなんだか手に負えそうもない素材な気がして、長いこと横目で見つつスルーしてきた対象でした。幸い、今ではネット上にたくさん動画があるし、詳しい方に話を聞いたりして情報収集。まずはやってみないことにはどうにもならないだろう、ということで、先の1/5モデルで検証しようと材料を揃えました。

「粘度のある樹脂に硬化剤を混ぜて、それをガラスクロスに含ませて硬化を待つ。」文字にすればそれだけの過程ですが、果たしてどうなることか。

試作するパーツは、キャンパーシェルのルーフ部分。ここはポップアップ仕様にするので、軽く強くつくらねばなりません。また、実車では3.8mにもなるので、たわまないようにリブも必要です。最初に、凸凹の凸型を木で作り、その上にFRPを貼っていく工法を試してみました。凸型の方が凹型よりも工作しやすいので、まずこの方法に挑戦です。

(左)型はひとまず凸型で製作。素材は木製パネル。(右)型を外しやすいようにアルミテープをきっちり貼りつめる。

FRPはまったく初めて、材料も道具もなにもかもが新鮮です。硬化後に型から外しやすくするために、凸型の上にアルミテープを貼り、その上にガラス繊維を置いていきます。ガラスだからハリがあって、リブの角部分にうまく沿わないので両面テープを使い仮固定。ここは完成時に裏側になるからこれでいいはずです。

凸型ができたら、いよいよFRPを塗布! 指示書通りの配合にして、ハケでガラス繊維の上に置いていきます。ぺたーっとなるウチは良い感じだったのですが、例のリブの角がどうしても浮いてきて、空気が入ってしまう。専用の気泡追い出しローラーでコロコロしてみるけど、どうにもダメ。だんだんと繊維がほつれてきてしまって、ついには穴が…… いわゆる、収拾がつかない、という状態に陥り、残念ながら初回は失敗作となりました。面に関してはヤスリがけでどうにかなるレベルではないですね。

(左)失敗作その1。穴が空いているうえ、ガラス繊維の浮きのせいでリブの角が甘い。(右)リブ周辺を上から押さえる型を作って再トライ。

やはり、凹型方式じゃないと難しいのかも、と思いつつも再トライ。今度は、ガラス繊維がバラバラにならないように加工されたエマルジョンマットというものを使ってみます。また、前回浮いてしまったリブ周辺を押さえる型を作ってみました。再びFRPをマットに含ませていきます。十分に塗布したところで押さえ型を被せ、重しやテープを使って造形物に押しつけます。

結果は…… 初回よりは良いけど、やはり浮きが出て気泡の形のまま硬化したり、FRPが足りず穴が開きかけた箇所が出来てしまったり。表面にも繊維の凸凹が出てますね。このやり方だと重力でFRPが下方へ流れてしまって、薄い箇所や表面の荒れが生じてしまうのは避けられないのか……。やはり、凹型を作らねばダメか。

FRP、難しいけれど、ゼロから欲しいパーツが作れそうなことはわかりました。二度の失敗を経て方針転換、ルーフを反転した型づくりを進めることにします。

さて、ここで話は1/5スケールから1/1へ戻り(?)ます。2022年秋、オーストリアでは、あるアクションがついに実行に移されようとしていました。

次回、Caddy、再生。

凸型をあきらめて凹型を製作中。

PICKUP