STORY

Der FREIRAUMデアフライラウム“自由な余白”♯13

「外国あるある」の洗礼を受けました!

横川 謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2023.05.15

積み込み当日にコンテナトラック現れず!

前回、Golfsrudel博物館のヨーゼフとそのお友達の手によって「自動車の姿」に蘇ったCaddy は、それから数ヶ月を経ていよいよ日本へ運ぶためのコンテナ積み込みという山場を迎えました。私にとって自動車の個人輸入は今回が初めてです。日本への航送を手配し現地で待機していたのですが、輸出業者に約束をすっぽかされました……。

コンテナの手配こそ専門の代理店に依頼しましたが、なるべくできることは自分で、と思い、自らバンニング(貨物をコンテナに詰める作業)しようと友人とオーストリアに赴きました。コンテナ内で車両を固定するベルト(ラッシングベルトというのですね)も用意し、渡航前に固縛(これも業界用語?)の練習もして行ったのですが……。

オーストリア、首都ウィーンからクルマで30分ほどのシュトッケラウに、ヨーゼフのGolfsrudel博物館はあります。ここにこんなに何度も足を運ぶことになるとは。日本より少し色の濃い桜が咲き誇る季節。しかも今回は、私に続いて日本人2人目の入館者となる友人も同行です。

駅前の桜の樹の下には、新型CaddyやT6が佇むなんともヨーロッパな風景。といっても、この手の“働くワーゲン”に萌えてるのは私たちくらいですが。ちなみに宿の下にあったギリシャ料理のレストランで「日本人て来たことある?」と聞いたら「君らが初めてだ」と言われました。特に観光名所があるわけでもなく、間違っても日本からの団体ツアーは来ないシュトッケラウ……。最大の見所はヨーゼフのGolfsrudel博物館!ですが、それもウェイター氏は「そんなのあるの?」と(笑)。

一夜明けて Golfsrudelに向かいます。Golf! Golf! Golf!!「 ゴルフの群れ」という博物館の名の通り、相変わらずのイカれた(イカした?)空間です。居並ぶGolf たちを抜けて、奥の間へ。

倉庫で対面したCaddy は、さらに復元作業が進み、どこからどう見ても「自動車」です。フロントガラスやヘッドライトなどもついています。ドアやフェンダー、ボンネットなどは、どうやら他のゴルフから流用したと見えて、パッチワークのような色使い。フォルクスワーゲンがType1の時代から伝統的に作ってきたHarlekinという仕様を連想させます。

カーゴトップはヨーゼフからのオマケ。

エンジンの補機類、電装系のハーネスや燃料パイプ、シートベルトや内張りなどは戻されておらず、ひとまとめになって箱に入っています。部品は揃っている、というのですが、ぱっと見、揃っているのかどうか判断もつきません。ハーネスが足りないと致命的なので、一応広げてどこを結ぶものかヨーゼフに確認しました。細ーい金属の管はブレーキパイプのよう……折れないように梱包します。

カーゴルームには、オマケでもらったキャブ式の1.5リッターエンジン。なかなかの状態ですけど、ヨーゼフは「回る」と言ってます。このCaddyのオリジナルと同じ形式のJBエンジンなので、部品取りに使える……かも?

その他、右のドアノブがなかったり、いろいろ欠品してそうですが、ゴルフⅠと共通で部品はけっこう手に入るので、細かいことを気にするのはやめました。何より錆のない絶品シャーシに価値があるのだ! ……と思っているのは私だけで、知らない人が見たらスクラップ寸前の車に見えても仕方あるまい。

売買契約書を書き、取扱説明書など手渡されると実感が湧いてきます。復活・登録までの道のりは長そうですが、憧れのCaddy入手!です。カーゴトップもオマケでゲット。たぶんこれは日本にはないんじゃないでしょうか。かっこいい。

前日の予兆

そんなこんなで、積み込みの準備をしつつ、翌日のコンテナ車到着を待つわけですが、ちょっと嫌な予感はしていました。というのは、いつまで経ってもピックアップに来る時間の連絡がなかったのです。

あげく、直前になり日本の代理店から「船の予定が変わって集荷日が変わるかも知れない」との驚愕のメール。

「いやいや、こちらは、オーストリアまで来て待ってるんですけど!」
「明日来てくれないと、あとの予定もあるし、遅らせられないのですが!」

などとメールするも、時差はあるし、週末だしで無情にも時間は過ぎていきます。しかし、仕方ないので、翌日朝からクルマを引き出す準備をしていると「オランダの輸出業者に電話して直接確認してくれ」と。

「積む」が叶わず「詰む」筆者

なんですかそれ、なんで私が電話しなくちゃならないのですか。仲介手数料払いませんよ……。呟いてみてもどうにもならないので、渋々オランダの業者へ電話かけました。しかし出ました!常套句「担当者が不在なのでわからない」と。時間差で三回電話して同じ答え。詰んだ……。

結局、三人で1日待ちぼうけです。あんまりですね。友人にもヨーゼフにも申し訳なく。日本の代理店に猛抗議です。「輸出会社の負担で人を派遣し、責任持ってコンテナに入れる」と言うのですが、どうなることやら。

暮れなずむシュトッケラウの道をとぼとぼ歩いて宿に帰ります。ギリシャ料理店、美味しかったので再訪。呑まなくてはやってられないのです。

次回、さらに衝撃の展開へ続く……。

「そんなこともあるさ」  右からヨーゼフ館長、顔の引きつる筆者、手伝いに来てくれた友人。みんなありがとう。

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