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Golf Caddyキャンパー自作に至るまでの履歴書(前編)Der FREIRAUM デアフライラウム “自由な余白” ♯14

著者紹介(今ごろ!?)

横川謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2023.06.15

前回、輸出業者が現れずオーストリアに置き去りにしてきた(ヨーゼフの博物館に預かってもらった)Caddy、その後は紆余曲折ありながらも無事にコンテナ船に載りました。日本までは2ヶ月ほどの航海になるようです。その間に……という訳でもないですが、キャンパー計画ばかり語り続けて来た私の、ここまでのGolfへの入れ込みっぷりについて、読者の皆さまにご説明しておこうかと思い、少し書かせていただきます。今回はその前編。実車編です。

現在、私は3台の1/1Golfと5500台あまりの水冷エンジンVWミニカーを抱えています。しかし元々はどちらも1台ずつでした。まずは実車のお話をさせていただきましょう。

すべてはここから始まった。1988年式のGolf Ⅱ Ci。

免許を取って初めてのクルマを買おうと、たまたま近所にあったヤナセの中古車センターで1988年式のGolf Ⅱに試乗したのが全ての始まりです。走り出しの数十メートルで、本当に目から鱗が千枚くらい落ちました。アクセルペダルやステアリングの重さ、ボディ剛性、お洒落な音色のダブルホーンなどなど、実家にあった親父の国産セダンと何もかも違う「欧州車の味わい」に一発で虜になったのです。

特に予備知識もなく、近所のお店で手に入れたGolf Ci。その後あちこち出かける中で、その直進安定性、機能性、合理的なパッケージングなどを存分に実感する傍ら、関連する文献を読み漁る日々。まだインターネットなどほとんど整っていなかったので、旧いCar Graphic誌や徳大寺有恒さんの本などを読むうちに、これはどうやら「初代」を知らねばGolfを語れない……などと思うようになりGolf Ⅰへの憧れが芽生えたのでした。

(左)1992年式Golf Cabrio Classicline (右)1980年式Golf E。山形の林道にて。

まず手に入れたのはハッチバックではなく、初代のカブリオでした。基本的なボディはGolf Ⅰですが、機関はGolf Ⅱに近い1992年式のクラシックライン。30年を経て今でも乗っています。そして2002年、念願叶って1980年式のGolf Ⅰ Eを入手。過去に何度か雑誌の表紙にも抜擢いただいた通称ミズイロ号、こちらも既に20年乗っております。

最新のGolfも踏襲し続けるコンセプトの普遍性もさることながら、やはり心を捉えて離さないのはジョルジェット・ジュジャーロ(ジウジアーロ)氏によるデザインです。丸みのあるカブトムシに比べればスクエアと形容される初代Golfですが、実はけっこう丸みを帯びています。特にボディ下部の絞り込みやテールゲート付近の造形、代々受け継がれる太いCピラーなど、ふくよかさとシャープさを併せ持ち、実用車ながらも趣のあるデザインはさすがジュジャーロ。

「ほんとうにここに書いていいの?」。ミズイロ号はマエストロ・ジュジャーロ氏直筆サイン入り。

その端正な佇まいは、都会の無機質な建物、和の小径、大自然の中、と背景を選ばずどこにでもスッと馴染みます。2013年、私は幸運にもGolf Ⅶの日本導入イベントをプロデュースする機会を頂戴し、会場に並べたミズイロ号の天井にジュジャーロ氏からサインをしてもらうという、おそらくGolf趣味人生の一つのクライマックスとも呼べる体験をさせていただきました。

(左)ディーラーに掲示されたアフターサービスをアピールするポスター。上段にヴァルター・デ・シルヴァ氏、下段にジュジャーロ氏のサイン入り。(右)このポスターを撮影するために用意した6台のGolf。Ⅰ、Ⅳ、Ⅴは自分の愛車を持ち込んだ。

ディーラー掲出用に作らせていただいたポスターには、ジュジャーロ氏がGolf Ⅰ、ヴァルター・デ・シルヴァ氏がGolf Ⅶ、と、それぞれがデザインを手掛けたフロントグリル横にもサインしていただくなど、これはもうまたとない宝物になりました。

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