ガレリア・トアンの風景 #01
自動車画家になるまで
安藤 俊彦 2022.06.28いつから、自動車画家と言われるようになったのか?
自動車誌『NAVI』(二玄社刊)の「From Editor」の挿絵、『あかくん まちを はしる』(福音館刊)など絵本を手掛ける自動車画家であり絵本作家である安藤俊彦画伯。移住した宮崎にて、作品を展示するギャラリー「ガレリア・トアン」を開きました。画伯による展示されている作品の紹介、またガレリア・トアンのオーナーであり、料理研究家であり、画伯の奥さまである安藤知代さんによる食にまつわるエトセトラを、代わりばんこに綴るコラムです。
広告・雑誌などの仕事でクルマをモチーフにした作品が多く、出版している絵本は、クルマが主人公の絵本ばかり、そしてAAF(オートモビル・アート連盟)という乗り物を描くアーティストの団体の会員でもある。
当然といえば当然のことなのかもしれない(笑)。
もともとは、ファッション・イラストレーション畑の出身である。線のスピード感が好きで、人物クロッキーばかり描いていた。広告会社のサラリーマン・イラストレーター時代も、ファッション系を任され、楽しい会社生活だったが、絵描きにとって一番大事な独自のタッチを創ることができず、気がつくと29歳になっていた。
そして、フリーランスとなり、出会ってしまったのが伝説の文化自動車雑誌「NAVI」だったのです。
ここで、現在のわたし独自の画風(世界で一人w)、スクラッチ・ドローイングが生まれました。1989年、NAVIが5年目を迎え、新編集長にS氏が就任し、その巻頭のページの挿絵を描くことになったのです。モチーフはもちろんクルマなんですが、描く車種や風景などほんと自由・勝手に描かせていただきました。S編集長には感謝しかありません。
そこから10年間色んな画材も試したりしました。テクスチャーの違うイラストボードにジェッソを何回も下塗りしたり、パステル・コンテの黒色と茶色だけを使い、ねり消しゴムをこねて画面を擦ってフキサチーフで定着させ2色のモノトーンの世界にしたり、そこからアクリル絵の具を重ねあわせ、彫刻家が使うステンレス製のヘラで削ったりしました。下色とのバランスの加減をとるのが非常に難しかったです。こんな感じでスクラッチ・ドローイングはほぼ完成しました。
そして三年前、このタッチのおかげかはわかりませんが、素晴らしい展示会を開くことができました。
世界的に有名な二輪スクラッチ・モデラーの高梨氏から、「銀座和光ホールで2人展をやらないか」というお誘いを受けたのです。意味の全く違う「スクラッチ」ですが、立体と平面のバランスの取れた会場作りが出来、今までにない最高の展示会となりました。
この和光のイベントが終わって翌月に移住し、今こうして九州の陸の孤島と言われる宮崎市の外れの住宅街の古家の一角で「ガレリア・トアン」という週末限定のギャラリーをオープンしました。大都会のギャラリーとのギャップが面白いです。宮崎に来た際には、どうぞお立ち寄りください。