Der FREIRAUM デアフライラウム “自由な余白” #05
理想的な“個体”
横川 謙司 フォルクスワーゲン・ゴルフ 2022.08.241/1組立てキット!?に遭遇
VWゴルフの日本屈指のマニアが、Golf Caddy Camperをなんとか自分で手に入れたい、というエピソードの第5話です。オーストリアのあの博物館が再びやってくれました。
Kenji,vielleicht hätte ich ein Angebot für Dich.
「ケンジ、とっておきのがあるんだが……」
1/1Golf Caddyの中古車捜索をする中で、もしやあの男なら何か情報を持っているかも、とメールした相手は、連載#03 で紹介したオーストリアの実車Golfコレクター、Josef Juza。そして返ってきたメールが「まさかのオファー」だったのです。
ウィーン近郊でGolfばかり100台以上コレクションしてる男。
Camper含めてCaddyだけでも10台持ってる男。
「なんかいいCaddyの出物、知らない?」とメールしたものの、そんなにタイミングよくいい売り物があるわけないし、手掛かりになりそうな情報でもあればいいな、くらいに思っていたところに「とっておきの一台」があるという返事がきたのです!
いや、それはすごい、聞いてみるもんだ! ということで、メールを読み進むと、なんと、これまた一筋縄ではいきそうもない展開が控えていました。
なになに……ein Benziner mit 70PS und natürlich Linkslenker……、ガソリン仕様で70馬力の左ハンドル……
よしよし、ディーゼルは中古サイトでもけっこう見かけるのだよ、欲しいのはガソリン仕様。
……Der Caddy ist allerdings in alle Einzelteile zerlegt!……
え!? ちょっと待てぃ!? Caddyは全てのパーツがバラバラの状態!?
いやぁ、面白いぞJosef、どういうことかとさらに読み進めると、「20年前に新車で買って、Show Carに仕立てようとすぐにバラして、結局そのまま手付かずの状態なんだよ。バラバラだけど、パーツは全部ある」と。
なんという変態コレクター。そんなに話を面白くしなくていいんですけど。
ということは、ほぼ新車、ってこと? だとすれば、距離もほとんど走っていない?
1983年は、欧州市場にCaddyが導入された年で、まさにデビューイヤーモデル(※Golf Pickup自体は、1979年に北米市場にてRabbit Pickupとして先行デビュー)。
まさに、今手に入る最高のCaddyじゃないか、と(バラバラだけど)。さらには「ボディは、錆止めの下地処理をしてサフェーサー塗った状態である」と。「好きな色が選べるようにしておいたよ」と。
そう、中古サイトでみるCaddyはモノによっては錆がすごいので、一切の錆がないCaddyはそれはそれでまたお宝と言える(バラバラだけど)。
これをベースにキャンピングカーを仕立てて行こう、という私には、信頼できる人物から譲り受ける「キット状態の新品Caddy」はこれ以上ない個体と思われ、「ベース車探し」は一気に進みました。
まさか、欧州から自動車を個人輸入することになるとは! しかも、某ミニチュア月刊誌のごとく、組み立てから楽しめるとは!
私はすぐさま「それ買う!」と返信、追ってJosefから送られてきた画像は、笑っちゃうくらいスケルトンなCaddy。それにしても、この状態で20年も放置しておけるなんて、どれだけ保管スペースあるのか、と。背後にはまだまだGolf1が眠っていそうだし。
だがしかし、自動車輸入に詳しい方なら、既にお気づきと思いますが、なにごとも「そんなに簡単にはいかない」のが常。プロジェクトが道半ばで強制終了とならないために、並行して陸運局や税関に相談をしていた私は早々に「自動車通関証明書」の壁にぶち当たるのでした。思わずミスチルの歌詞が思い浮かびます。
「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな。」
さぁ、その壁とはどんな壁でしょう。無事越えられるのでしょうか。終わりなき旅にならぬよう、盤石の態勢で挑みます。