STORY

ちょっと変だけど、毎日がちょっと豊かになる ― YUの「愛車のある暮らし」#07

YU アルファ・ロメオ・スパイダー 2023.06.09

諸行無常のイタ車あり

車、バイクに乗ることが愉しい。できればずっとそうしていたい。なぜかはよく分からないけど、きっと私の祖先は馬を乗り回す女騎士だったのかもしれない。女のクセにぃと言われるけど、そんな時は、ありがたく先祖のせいにしている。(ごめんね全先祖)横着な性格も、忘れっぽいところも、物心ついた時から全く変わっていない。人間は誰しもDNAには抗えないってことで……

私の仕事上、終日一歩も外に出れそうもないデスクワークの日もあるけど、トイ レットペーパーが無くなりそうだから、と適当な理由をつくって車に乗り込む。僅かな時間でもハンドルを握れる日は幸せだ。この世は実に単調で、滑稽、絶望的だけど、乗り物に揺られてるとそんなネガティブな感情もすーっと消えていく。未来を憂うような妄想の世界から脱して、ありのままの現実を愛する私でいられる気がする。

初めてのマイカーは今まで見たことがない姿カタチをしていた。ミステリアスな深海魚だが、アクアパッツァにしたら美味しそうだなっと思って食べたら、致死量には及ばないが僅かに毒を有していたみたいでいまだに中毒の後遺症に悩まされてい る。

そんな感じで、イタリア車に乗るとマインドをコントロールされているような魔法にかかるのだ。(伊車乗りは車を乗り換えてもまた伊車に戻ってくるらしい。)自分を見直したい人は環境を変えなさいとよく言われるけど、私は「車を変えなさい」、だと思う。

偉そうな持論だが、正直彼らから学ぶことは多いのだ。明るく、 楽観的で、遊び心に溢れる。イタリアのプロダクツは人生を楽しむヒントをいつも与えてくれる。ただし今を最高潮で過ごせる代わりに、その喜びは安定ではない。 諸行無常のイタリア車。昨日まで絶好調で走り回れてたのに、突然壊れることもしばしば。世のすべてのものは、移り変わり、永遠に変わらないものはないという大切なことを教えてくれる。仏教の中心思想を身近なところで触れることができる。 刹那主義者(刹那主義車)だと揶揄されそうだが、自分で決めたことなんだからそれでいいのだ。

イタリア人がつくる車には神が宿ると信じられている。

(※個人的な意見です)
イタリア車は、美しいだけじゃない。「美しい流線ですね〜」とか「官能的なエンジンだ」と称されるけど、私の心を掴んで離さないワケは圧倒的な「個性」をもっているからだ。個性というのは、深い。世界で最も美しい顔トップ100もいいけど、個性的で魅力的な女優の方が好きだ。

車も”車生”を謳歌しているような強烈なキャラクター、表面上では数値化できないそんな車に人生で何回出会えるだろう。人間で考えると運命の人は人生で1人か、良くて2人がいい所だ。それが、初めての車で出会えるのは奇跡に近い出来事だと思ってる。できる限り大切にして、全国いろんなところを走り回りたい。そうじゃ ない日はガレージでボディを磨いたり、珈琲を片手に眺めている。今日も断続的に雨が降っているから、ゆっくりガレージで過ごしながらこの文章を書いている。

この先たとえ試練が待っていようと愛おしい愛車との時間だから迷いはないだろう。私が面倒をみてあげるからご安心なさい。お互いに己の信じた道を突き進みましょう。

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