BMW R 12 カスタム・プロジェクト:4台の個性が激突
PF編集部 BMW R 12 2024.08.288月23日(金)、東京都・麻布台ヒルズに位置するBMWのブランド・ストア「FREUDE by BMW」で、「BMW R 12 カスタム・プロジェクト」の完成発表会が行われた。このプロジェクトは、BMW Motorrad Japanとカスタムバイク雑誌『RISER Magazine』が共同で進めているもので、カスタムバイク界で名高い4組のビルダーたちがBMWの新型モデル「R 12」をベースに、独自のカスタムバイクを制作するという挑戦的な試みである。
今回の発表会では、4台のカスタムR 12と1台のノーマルR 12が展示され、各ビルダーが手がけたカスタムバイクが一堂に会した。これらのカスタムバイクは、それぞれ異なるスタイルや哲学を持つビルダーたちが、R 12という共通のプラットフォームを通じて表現したものであり、まさに個性と創造力がぶつかり合うプロジェクトとなった。
まず、HAMANS CUSTOMの松本真二が手がけたR 12カスタムは、1960年代のコーチビルドにインスパイアされたデザインが特徴である。松本は、古き良き時代のモーターカルチャーに強い影響を受けており、その影響は彼が手がけるカスタムバイクにも色濃く反映されている。今回のR 12カスタムプロジェクトでは、松本がカフェレーサーのスタイルを採用している。これまでのHAMANS CUSTOMの作品とは一線を画すスタイルであり、彼の持つ独自の美学がどのようにR 12に昇華されているかが注目された。
次に、MOONEYESが担当したR 12カスタムである。MOONEYESは、日本国内外で多くのカスタムショーを主催し、特にホットロッドやカスタムカーの分野で絶大な影響力を持つブランドである。今回のプロジェクトでは、Katie’s Customsの田崎勝也が製作を担当し、MOONEYESらしい「スピード感」を重視したデザインに仕上げている。田崎は、BMWの象徴ともいえるボクサーエンジンの造形美を活かしつつ、フルカウルのボディを装備したスタイルを採用。まるで高速を疾走するランドスピードレーサーのような印象を与える仕上がりとなっている。
TRIJYA Custom Motorcyclesの岡本佳之が手がけたR 12カスタムは、将来的な市販化を念頭に置いたデザインである。TRIJYAは、オリジナルパーツの開発や販売を手がける企業であり、その技術力とデザインセンスを生かしてR 12に新たな命を吹き込んだ。特に注目すべきは、CADや3Dスキャニングといった最先端の技術を駆使して設計された外装パーツである。岡本は、道交法に準じたカスタムパーツの開発を進めながら、R 12の足まわりや外装の大幅な改造に取り組んでいる。彼の手によるカスタムバイクは、ストリートでも合法的に楽しめることを意識したものであり、その完成度の高さが多くの注目を集めた。
最後に紹介するのは、Chirihama SandflatsのメンバーによるR 12カスタムである。石川県千里浜で開催されるビーチレース「Chirihama Sandflats」を主催する彼らは、砂上を疾走するドラッグレーサーをイメージしたR 12を制作した。千里浜のビーチレースは、1969年以前に製造されたヴィンテージバイクのみが参加を許される独特なイベントであり、その主催者たちがR 12という現代のバイクをどのようにカスタムするのかが大きな関心を集めた。彼らは、R 12のフレームデザインを見て、砂浜でのドラッグレースに最適なカスタムに仕上げられると確信し、リアサスペンションをリジッド仕様にするなど、極限まで車高を下げたスタイルを採用している。
発表会では、BMW Motorradのゼネラル・マネジャーである佐伯 要氏と、ブランド&プロダクト・マーケティングのシニアマネジャーである中根知彦氏が登壇し、プロジェクトの意義と今後の展望について語った。佐伯氏は、BMW R 12が持つカスタマイズ性の高さと、それを活かすための今回のプロジェクトがいかに重要であるかを強調した。また、中根氏は、日本のカスタムビルダーたちの技術力と創造力を世界に示すとともに、BMWのブランド価値をさらに高めることを目指していると述べた。
「BMW R 12 カスタム・プロジェクト」は、2023年3月に発表され、2024年春に向けて本格的にスタートした。このプロジェクトを通じて、日本のカスタムバイク文化の多様性と奥深さが改めて示されたと言える。各ビルダーが手がけたカスタムバイクは、R 12の可能性を限界まで追求したものであり、その完成度と独創性は多くの人々に感動を与えた。今後、これらのカスタムバイクがどのように進化し、さらなる発展を遂げていくのか、今から期待が高まっている。