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100マイラー・佐々木 希のトレイルランニング・ギア選び #02 国内最大級のトレランイベント「TOAD」はモノ好きにはたまらない買い物天国だった!

佐々木 希 TRAIL OPEN AIR DEMO 10 2024.04.19

舗装路から岩場、ぬかるみまでさまざまな路面で構成されるコースを、刻々と移ろう天候や気温に対処しながら延々と走り続ける「トレイルランニング」には、優れたアイテム、マテリアルが不可欠だ。「決して諦めなければ、私は160kmを駆け抜けられるのだ。」そんな決め台詞で完結する、ULTRA-TRAIL Mt.FUJI 2023 参戦記を寄稿してくれた“100マイラー”佐々木 希選手が、自らのトレイルランニング・ギアを紹介する連載、第2回は東京・青梅のイベント「TRAIL OPEN AIR DEMO 10」訪問記。

TOAD2日目は9時から。1時間後に出走する選手の姿が多い。レースに必要なものが全てここで手に入るほどの品揃え。

2024年4月6(土)、7(日)、青梅市永山公園運動場で開催された「TRAIL OPEN AIR DEMO」に2日目の4月7日、訪れた。今回で10回目を迎えるこのイベントは、トレイルランニングを中心とした道具を自由に試し、購入もできる体験型展示・販売会で、トレイルランニング、アウトドア関連のブランドが多数集結する。こうしたイベントでは国内最大級だ。

10時、30kmのレースが先にスタート。日本のトレイルランニング競技者人口は現在およそ20万人、男女比は8:2。年々人気が出ているこの競技のレース数は400に及ぶ。中でもこのレースは参加者がかなり多い。

広い運動場の一部がこのイベント会場とされ、残りは1999年に始まり、国内で草分け的存在のトレイルランニング・レース「青梅高水国際トレイルラン」(4月7日開催:30km・15km)のスタート&ゴール会場になっている。

他のトレイルランニング大会会場でも、トレラン関連のショップが出店していることは多いが、ここまでの規模は類を見ない。都心から遠くない立地とあって、レースには参加せず、このイベントだけの目的で来る人も多数いる。なぜならこのイベントには魅力がたくさん詰まっているからだ。今回は76ものブランドが出店、地元飲食店も参加、地ビールなど青梅ならではのフードの数々も楽しめる。会場は青梅駅から徒歩10分と近く、青梅丘陵の入口でもあり、景色もよい。今年はよく晴れて初夏の陽気、イベント日和となった。

(上)「PaaGo Works」日本のアウトドアブランド。トレランザック「RUSH」は非常に人気だ。(左)「OLENO」日本の靴下メーカーが自社ブランドとして立ち上げた。ソックス、アームスリーブなどが人気だ

開催2日目、9時の開場と同時に、およそ2000名の選手が集まり熱気のある会場に到着。参加する友人を探してはエールを送り、10時のスタートを見送ったあとはひたすらブース巡りをしていたら、およそ5時間後のゴール時間を過ぎてしまった。

トレラン商品は、現物を見られずネットでしか購入できないことが少なくない。このイベントの最大の魅力は、たくさんのメーカーが集まり、様々なギアを実際に見たり試せたりすること。新商品やネットで手に入りにくいものもその場で購入できる。イベント特別価格で、場合によっては大幅に値引きされ、ノベルティなど特典が用意されることも多い。

ランニングイベントに参加したり、出店企業のアンバサダーとして来場するトレラン界のトップ選手にも会えたりもする。この日は、2019年「Skyrunner World Series」で年間王者に輝いた上田瑠偉選手も、自身のブランド「Ruy」のプロモーションのため登場した。

(左)「Ruy」でグッズを購入すると、上田瑠偉選手が本人のポストカードにその場でサインをしてくれる。(右)斬新なデザインのトレランポールはイタリア製。メインポールに対してグリップが斜めについていて、力が入れやすいことと軽量が特徴。「N&W Curve」昨年から国内販売が始まった。

とりわけ充実していたのは、私がカウントしただけで12社ほども集まっていたシューズメーカー。サロモン、ノースフェイスといったメジャーブランドから、アルトラ、トポ、コロンビアモントレイルといったトレランではおなじみのブランド、LA SPORTIVAやSCARPAといった高級ブランド、そして最近日本に進出したNNormalなど、なかなかお目にかかれないブランドもあり、せっかくなのでたくさん足入れをしてみた。芝生の会場を走ってみて、土の上での感触を試せることも、普通のショップではできない体験だ。

本連載の第1回でも説明したが、コンディションが多様な不整地を走るための道具は各社個性的だし、同じメーカーの中でも、走る距離や路面の特徴などによって何種類ものラインナップがある。デザイン、色、特性も多彩で、なかなか選びぬくのは難しい。

(上)イタリア「SCARPA」。登山靴のイメージが強いがトレランシューズにも力を入れている。(左)アメリカ「MERRELL」。現在、私のメインシューズ。(右)同じくイタリアの「LA SPORTIVA」。こちらも、登山靴・トレランシューズともに人気がある。

シューズメーカー各社から、トレラン経験が豊富なスタッフばかりが会場には送り込まれていた。少し質問すると熱く熱くマンツーマンで説明してくれ、ランナーの目的に合わせてシューズ提案をしてくれるほか、丁寧に履き方の指導もしてくれる。

トレランシューズの価格は20,000円弱〜高いものは35,000円位までとバリエーションは幅広いが、中でも3万円台のハイエンド・モデルも試し履きできるのは、こうしたイベントならではといえる。

世界で最高の山岳アスリートといわれるキリアン・ジョルネが手掛けたアウトドアブランド「NNormal」が昨年秋に日本に上陸。(左)看板商品「KJERAG」¥35,200。超軽量ながらロングディスタンスまで視野に入れている。ハイブランドのタウンスニーカーのように目立ちにくいデザインで、素材に高級感がある。

またレースの参加者にとって楽しみなのは、ブランドによってはレース中の貸出もしてくれることだ。長距離のレースであれば、あらかじめ履き慣らした自分のシューズで出るのが定石だけれど、気になっているモデルをレンタルし、ショートのレースで試してみるというのも新しい楽しみ方かもしれない。

(上)オーストリア「DYNAFIT」。(左)ドイツ「LOWA」。(右)アメリカ「ALTRA」はゼロドロップシューズで有名だ。

TOADは「トレイルランニングって、興味があるけどどうなんだろう?」という人にぜひ訪れてみてほしいおすすめのイベントだ。初心者向けのミニ講習会などにも参加できるし、何より横ではリアルに選手が元気に出走していき、数時間後に笑顔いっぱい、もしくは苦しそうに顔を歪めて懸命に帰ってくる姿を目の当たりにできるのだ。

トレランのアパレル商品は、輸入ブランドと国産ブランドがそれぞれ個性を競っていて、とにかくおしゃれ。なおかつ、アスリートの能力を最大限に発揮させるための技術革新が激しく、山中などの苛酷な環境にも耐え、寒さや暑さなどに対応できるようにできていて高品質だ。競技をしていない人のちょっと機能とデザインにこだわった普段着としても、ぜひ注目してほしい。

<つづく>

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